完全にピントがズレている企業の介護離職対策

 この意識調査結果から明らかなのは、現役世代が自分や配偶者の親の問題で介護休業制度を利用したとしても、ほぼ確実に後悔するということだ。その理由としては、「(在宅での)仕事と介護の両立によるストレス」「上司や同僚への負い目」「問題解決につながらない」などである。要介護状態の親と向き合いながら、在宅で仕事をする(これが介護休業制度を利用した人の実情)などできるわけがないのは当たり前の話で、認知症であればなおさらだ。

 また、勤務先会社に求める施策としては、全員が「いつでも何でも気軽に相談できる体制」を挙げている。介護休業制度の充実を推進する(=自分で何とかしろということ)世の中の動きと真逆で、プロに頼ったり相談したりしたい、親に何かがあっても職場を離れずに済む労務インフラを整備してほしい、という希望が分かる。

 大企業を中心に介護休業制度の充実化が図られており、国もそれを後押ししている感がある。2000年から介護保険法が施行されたときは、「家族介護はせずにプロに任せよう」と、国を挙げてうたっていたにもかかわらず、である。

 団塊世代800万人超がすべて75歳以上の後期高齢者となる2025年問題は、多くの企業にとっても深刻な問題である。これからの現役世代は、親世代の介護問題を避けて通れない。比較的制度が充実しており、人材の替えが利く大企業以上に、中小企業や小規模事業者は特に早急に打ち手を講ずる必要があるだろう。