“うきうき・わくわく・いきいき”の先に成果がある

 笑顔を絶やさずに、明るいオーラを放って、“仕事をすることの楽しさ”を語る板谷さん。聞いている側もそのエネルギーを受けて、どんどん元気になっていく。板谷さんは、自らの役割が「元気の種まき」だと言って微笑む。

板谷 JAL時代、客室乗務員に向けて、営業の役割について講義をしたときに、なぜか「元気になりました」という感想をたくさんいただきました。「もしかしたら、自分は、誰かの元気のきっかけをつくれるかも……」と、そのときに思いました。また、ある人から「板谷さんは、種まきをしていますね」と言われ、「そうか、私の趣味は “元気の種まき”だ!」と。今では“元気の種まき”を肩書にしています。ただ、あくまでも種まきです。皆さん自身にその種を育てていただければ、うれしいです。

 板谷さんの“元気の種まき”の相手は、企業勤めのビジネスパーソンにとどまらない。大学の客員教授や非常勤講師として、現在は、多くの学生たちにも、元気の種をまき続けている。

板谷 企業のインターンシップに行って、キャンパスに帰ってきた学生が、「有名大学の人は、やっぱりすごい」とこぼすことがありますが、私は「偏差値の高い子が良い仕事をするとは限らない。一人ひとりに自分らしさを生かせる役割があるのだから、自分の仕事に精いっぱい取り組む人になってほしい」と伝えています。「偏差値の高低ではなく、仕事に対する思いが大切」だと。

 私が大学で講義をすると、「こんなに自分の仕事を楽しそうに話す人を初めて見た」とも、よく言われます。学生から見た大人たちは、仕事の愚痴をこぼしがちなイメージがあるのでしょう。もちろん、仕事には、嫌なことも辛いこともたくさんあります。でも、そこにとらわれてしまうのはもったいない。時間的に、仕事は人生の中でかなりのウエイトを占めるもの。だったら、できるだけ楽しいものとして考え、向き合っていったほうがいいですよね。

 たとえ小さくても、少なくても、板谷さんは「元気になる種」をまいていく。そこから生まれる新しい芽は、一人ひとりの仕事を楽しくし、やがて、みんなの職場に花を咲かせるはずだ。

板谷 私は、「楽しい気分の先に成果がある」という考えを大切にしています。「楽しい気分」というのは、「うきうき」「わくわく」「いきいき」の総称です。成果を最初に求めるのではなく、楽しい気分があれば、やがて、成果も生まれてくると思っています。また、孤独に戦うのではなく、仲間がいることも仕事の楽しさを左右するでしょう。それぞれの個性を持つみんなが、自分自身の特長を出し合いながら一緒に働くことがダイバーシティ&インクルージョンです。「あなたと私の違い」を感じながら、うきうきと会社に行き、仲間とわくわく働けば、仕事も人生もいきいきする――それを、私はずっと伝えていきます。