管理職と人事部に必要な“話をしっかり聴く”姿勢

 企業理念を浸透させて、誰もが「うきうき」「わくわく」「いきいき」働ける職場をつくるには、若手を巻き込むこと。さらに、 “若手社員にのびのびと仕事をしてもらいたいという意識”が管理職には必要だと板谷さんは説く。

板谷  管理職の方々を集めた研修をしたときに、私は「管理職が管理をするのは仕事。人は管理ではなく育むもの」と必ずお伝えしています。そして、「仲間とともに働く」「お客様のために行動する」というマインドをつくってほしい、とメッセージしています。

 もちろん、人によっては育つのに時間がかかりますし、遠回りもあるかもしれません。でも、部下の数字の成績が上がっていないからといって簡単に見限るのではなく、根気よくチャンスを与え続けてほしい。ゆっくりじっくりと、その人らしさを生かせるように育んでほしいです。

 板谷さんの話から、管理職の姿勢が組織にとってとても重要なことがわかる。さらにまた、どのような人材をどのようなポジションに配置していくかという点では、企業における人事部の役割もかなり大きいものにちがいない。

板谷 人事担当者の仕事として、「社員に社内制度をしっかり守らせなくてはいけない」というものがありますよね。でも、その制度が、本当に社員が活躍するための制度になっているか?という見直しが重要だと思います。

 たとえば、会社から“働き方改革”を命じられているからと、現場の仕事量を考えずに、残業しないことだけを優先する管理職の方もいますが、経営層や人事部は、制度を守れる人という視点だけで昇格の機会を与えるのではなく、自分の頭で考え、組織や部下のために適切な判断ができる人を管理職にするべきでしょう。

 また、管理職の話に耳を傾けることも人事担当者の大切な役割だと思います。私のJAL時代の人事の方は、「この人は○○の部署で伸びると思う」といった、私の気づきや考えをよく聞いてくれました。会社における人事部の最大の仕事は、“適材適所”の配置を実践すること――でも、適材適所って、なかなか難しいですよね。「社員の誰もが社内の花形の部署に行きたがっている」と考える方も多いでしょうが、私は自分が管理職になったときに、決してそうではないことがわかりました。ウィーン支店のカウンターで働いていた日本人スタッフの一人が、「私は接客が苦手なので、仕事を辞めたい」と言ってきたことがあったのです。外から華やかに見られる仕事ではなく、「人前に出ずに、ベルトコンベアーで流れてくる品物を箱に詰めるような仕事に就きたい」と。言うまでもありませんが、花形部署だと思われている部署が、誰にとっても花形とは限りません。管理職や人事担当者は“適材適所”の視点で、社員を見て、話を聴くことが大切です。