旧統一教会問題で
自民党分裂の可能性

 旧統一教会問題では、自民党が発表した所属国会議員と教会側との接点確認調査で、氏名が公表された121人のうち、安倍派が37人と最も多くなった。

 前述したとおり、安倍派は最大派閥であり、自民党所属国会議員379人(衆参両院の議長を除く)の4人に1人が安倍派であるため、最多となること自体は大きな問題ではない。

 問題は、安倍元首相亡き後、派閥を支えるべき萩生田光一政調会長や岸信夫首相補佐官、下村博文元政調会長と教会側との密接な関係が表面化したことで、派閥全体が弱体化し、分裂の可能性すら出てきたことだ。

 しかも、「中立的な立場だから」という理由でアンケート形式の接点確認調査の対象から外れた衆参両院議長のうち、衆議院の細田博之議長は、旧統一教会の関連団体「世界平和国会議員連合」の名誉会長を務めてきた人物で、教会側とはズブズブの関係にあった。そんな人物を対象から外した自民党の姿勢、そして、安倍元首相周辺への調査は困難とした岸田首相の説明には疑問符が付く。

「細田さんを調査の対象にせず、教会が持つ組織票を振り分けていたという安倍元首相に関しても、『本人が亡くなった今、確認するには限界がある』というのでは、清和会(安倍派)を守ろうとしていると言われても抗弁できませんね」(前出の自民党菅グループ中堅議員)

「最大派閥の会長を務めてきた細田議長や安倍元首相には踏み込まず、子分たちだけを『公開処刑』にするというのはあり得ない」(自民党麻生派若手議員)

 このような声が聞かれるのも、安倍元首相の呪縛によるものといえるかもしれない。

 今の自民党で元気なのは、茂木敏充幹事長くらいである。次期総理・総裁を目指すライバルたちが旧統一教会との関係をめぐり火消しに追われる中、唯一、関係のなさがクローズアップされているからだ。

 その茂木氏も、衆議院選挙区の10増10減で新たな区割りに基づく候補者調整、そして、それ以前に、新たにできる選挙区の支部長を誰にするかという難題が待ち受ける。

 旧統一教会との関係で名前が公表された議員は支部長に据えにくい。与党を組む公明党からは、「この選挙区はぜひうちの候補で」との強い要求も受けている。

 いずれも難題だが、この作業がおおむね完了しなければ、岸田首相は「解散」という伝家の宝刀を抜くことができない。その意味では、茂木氏の前途も明るいとはいえない。