バイデン大統領が苦しむ
トランプ前大統領の呪縛

 呪縛にさいなまれているのは岸田首相だけではない。アメリカのバイデン大統領も、11月8日に中間選挙を控え、ドナルド・トランプ前大統領の呪縛に苦しんでいる。

 中間選挙では、連邦議会上院の議席の3分の1(34議席)、および下院の全議席(435議席)が改選される。

 現在、上院は民主党と共和党が同数、下院は民主党がわずか9議席、共和党の議席数を上回っているが、中間選挙の結果、両院ともに共和党が過半数を占める事態になれば、バイデン政権の残り2年は、ホワイトハウス=民主党、議会=共和党と「ねじれ状態」となり、バイデン大統領は思い切った政策が打ちづらくなる。

 アメリカの政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によれば、9月6日時点での情勢では、上院は民主党と共和党が拮抗(きっこう)、下院では共和党が過半数を奪還する見通しで、東部のニューハンプシャー、ペンシルベニア、南部のノースカロライナ、中西部のオハイオやウィスコンシンなど、大統領選挙でも激戦区となる州では、両党の候補による接戦が続いている。

 共和党が勢いづいている背景には、記録的なインフレ、エネルギー価格の高騰などのほか、FBI(アメリカ連邦捜査局)によるトランプ氏宅への強制捜査がある。

 捜査は、トランプ氏が大統領を退任した際、機密文書を大量に自宅に持ち帰っていたことが要因だが、文書を押収することでトランプ氏を逮捕起訴に持ち込み、2024年の大統領選挙への出馬を不可能にするという政治的な意図も透けて見える。当然、トランプ氏の岩盤支持層(熱烈な支持者)はこれに猛反発し、バイデン政権や捜査へ怒りが頂点に達しているのだ。