肉の消費量が増えて
抵抗力、免疫力が強化された

 昔から「結核になったら卵を食べさせるのがいい」と言われてきました。つまり、栄養をつけるのが何よりの治療だと信じられていたからです。これはおそらく、日本人の経験則から生まれた知恵だったと思います。

 戦後、アメリカ軍は、日本人の劣悪な栄養状態を改善するために、脱脂粉乳を大量に配りました。とくに子どもの成長にタンパク質は欠かせませんから、学校給食では盛んに利用されました。70代以降の人でしたら、昔の脱脂粉乳特有の味を覚えている人も多いのではないでしょうか。

 それと同時に、日本人の食生活もどんどん変化、向上してきました。

 戦前に比べてとくに違う点は、肉の消費量が増えたことです。

 これによってタンパク質の摂取が増え、日本人の病気に対する抵抗力、免疫力が強化したのは間違いありません。

 それが結果として、結核の罹患率の急激な減少につながったのではないか──日本人の「国民病」が激減した理由について、私はそう考えています。「国民病」という言葉には、何か日本の風土や日本人の遺伝子に原因があるような避けがたい、おどろおどろしいイメージがあります。

 じつは、肉を食べない食生活が原因だった──それだけの話なのです。