2012年度を最終年度とする中期経営計画は大幅な未達に終わる見込みだ。未達の要因、そして次期中計に引き継ぐ課題を聞いた。

住友化学社長 十倉雅和<br />次期中計は投資回収ステージ<br />国内で石化設備の縮小も実行Photo by Toshiaki Usami

──売上高2兆4000億円、営業利益1900億円、経常利益2200億円を定めた中期経営計画は利益面で大幅な未達となった。

 10年先を見越し、三大課題の克服に努めてきた。一つ目は石油化学事業の抜本的な改革、二つ目は医農薬事業の拡大、三つ目は情報電子材料など新規事業の育成だ。

 計画通りにいかなかった点もあり、結果として数字は残せなかった。三大課題への先行投資を同時に進めたため財務も悪化した。しかし、将来に向けて種をまき、打つべき手は打った。次期中計で育った実を収穫していく。

 石化は世界最大級のコンビナートプロジェクトをサウジアラビアで推し進めた。稼働開始が計画から遅れた上、原料価格と製品価格の差である精製・石化マージンの悪化や設備トラブルに見舞われた。現在は操業が安定し、低マージンもそう長くは続かないはず。次期中計では想定利益を確保する。

 医農薬は傘下の大日本住友製薬が米国の製薬会社を買収して米国市場に進出。現地で統合失調症薬の販売が好調だ。さらに次の手として昨年、がん領域専門の米ベンチャーを買収した。世界初となるがん幹細胞を標的にした薬の開発に全力を注ぐ。

 情報電子材料では液晶の偏光板で世界シェアトップ3に食い込んでいる。今後は投資合戦というよりも、安価な材料を見つけ、生産効率を上げる技術力が勝負となる。中小型液晶向けに、高い機能と品質が求められ、当社の強みを生かせる土俵になってきた。