トラブル続きでいまだ再稼働を果たせず、首都圏の電力危機の一因となっている東京電力ホールディングス・柏崎刈羽原子力発電所(新潟)。その立て直しに招かれたのは75歳の中部電力元専務だった。特集『電力崩壊 業界新秩序』(全9回)の#1では、かつての業界3位に業界王者が助けを求めた裏事情、この件からも明らかな業界新序列に迫る。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
東電HDの新執行役員は75歳
中部電浜岡原発の元所長
「私たちも寝耳に水だった」
複数の中部電力社員は戸惑いの声を漏らす。
東京電力ホールディングス(HD)は3月30日、業界関係者を驚かせる幹部人事を発表した。
中部電の水谷良亮・元専務が4月1日付で入社し、トラブル続きで再稼働が果たせていない東電HD・柏崎刈羽原子力発電所(新潟)の所長補佐に執行役員待遇で就任することになったのだ。
水谷氏は2005~14年に中部電の浜岡原発(静岡)総合事務所長を務めており、「趣味は原子力」と言うほどの原子力分野の精通者。中部電在籍時から現場主義の熱血漢として定評があったが、そうはいっても御年75歳である。
長年業界をけん引してきた東電HDが「業界3位」の中電に人材を求めたことに、「そこまで東電HDは内部人材が枯渇しているのか」と業界関係者は驚いた。
この件からも分かるように、従来の業界序列は崩れ、ここ数年、混沌としている。
次ページからは水谷氏が招聘された裏事情を明かすとともに、大手電力「10社+α」の業界新序列を紹介する。