燃料価格高騰による“逆ざや地獄”に陥り、大手電力も新電力も財務悪化に苦しむ。家庭向け電気料金では新電力の楽天エナジーやLooopが料金改定したが、動きはまだ一部だ。特集『電力崩壊 業界新秩序』(全9回)の#5では、大手電力を巻き込んだチキンレースの様相、その背景にある事情を探る。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
「高圧・特別高圧」の薄利多売で
破綻や事業撤退に追い込まれた
F-Power、ホープエナジー、ウエスト電力……。
近年破綻したり事業撤退したりした大手・中堅の新電力には特徴があった。それは、主に法人向けを意味する「高圧・特別高圧」区分の電力販売量割合が大きかったということ。今年11月末での事業撤退を表明しているシナジアパワーもしかりで、高圧以上が100%だった。
特別高圧は2000年に、高圧は04~05年に小売り自由化してから20年前後もの経過があり、「既に薄利多売の世界になっている」と、ある新電力関係者は言う。そのため燃料価格高騰で電源調達コストが急激に上がると早々に「逆ざや」状態となり、経営体力が続かなかったり見切りをつけたりした。
ただし、それはこれまでのフェーズ。「これからきついのは家庭向けの低圧区分の割合が大きい電力会社」と、大手新電力幹部は見立てる。
新電力の楽天エナジーやLooopの家庭向け電気代の値上げは例外的で、旧一電(旧一般電気事業者)と呼ばれる既存の大手電力も含めて値上げを我慢する「チキンレース」状態になっている。
このチキンレースはなぜ起こるのか。次に値上げをするのはどこなのか。