電力崩壊 業界新秩序#3Photo:PIXTA

電力危機の一方で、西日本の大手電力4社に別の危機が襲い掛かろうとしている。カルテル問題による課徴金の支払いで、巨額の特別損失を計上する恐れがあるのだ。調査当局に協力的だった1社は「課徴金ゼロ」の可能性もあり、特集『電力崩壊 業界新秩序』(全9回)の#3では、課徴金の支払いを免れる可能性を持つ会社を予想する。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

カルテル行政処分は年内か年度内?
大手電力は課徴金に戦々恐々

「行政処分が出るのは年内とうわさされていたが、年度内なのかもしれないな」

 今冬の電力危機、ロシアのLNG(液化天然ガス)プロジェクト「サハリン2」問題、電気料金値上げ、原子力発電推進策、新電力の撤退……。電力業界は日々のニュースに事欠かない。その中で大手電力会社の社員のひそひそ話で最も話題に上るのは、カルテル問題である。

 公正取引委員会は2021年4~10月、独占禁止法違反(不当な取引制限)の容疑で関西電力、中部電力、九州電力、中国電力などに立ち入り検査を行った。顧客の獲得を制限するカルテルを結んだ疑いが強まったためだ。

 違反が認められた場合、独禁法に詳しい松田世理奈弁護士によると「通常は着手から約1年半から2年で行政処分が出る」。処分対象の企業は戦々恐々とし、業界中が処分の出るタイミングを今か今かとそわそわしている。

 注目は行政処分の内容。つまり各社に支払いが命じられるであろう「課徴金」の額である。

 電力業界は一様に財務悪化の暴風雨が吹いており、西日本の電力会社4社もしかり。23年3月期の通期業績予想は、関電が750億円の最終赤字で、中国電は過去最悪の1390億円の最終赤字。中部電と九電は本稿執筆時点では業績予想を明らかにしていないが、共にかなり厳しい数字となりそうだ。

 今年度に課徴金納付命令が下されれば特別損失計上となって、“泣きっ面に蜂”となる。ただし公取委の検査に協力的だった複数社は課徴金が「減額」または「免除(最大1社)」となる仕組みのため、「免除となる会社はどこか」に関心が集まっている。

 課徴金の金額はどれくらいの規模になるのか。免除になるのはどこなのか。