今冬の電力危機を回避すべく、政府は節電の取り組みに補助金を出す。節電システムベンダーとしてソフトバンク、元ソニーのインフォメティス、エネチェンジなどが顧客獲得に意気盛ん。特集『電力崩壊 業界新秩序』(全9回)の#8では、ついにあの大手電力も参戦したベンダーの戦いを報告する。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
「節電ポイント」特需に
システムベンダー競争激化
今冬の電力危機を乗り越えるべく、政府は電力会社の節電プログラムに補助金を出し、政策誘導する。補助金を原資に各電力会社は、家庭が節電プログラムに参加表明すれば2000円相当、企業が節電プログラムに参加表明すれば20万円相当のポイント・特典を付与する。
これは節電プログラムの仕組みを外販するシステムベンダーにとって特需となる。電力会社に使ってもらうべく、ベンダーによる顧客争奪戦が繰り広げられている。
資源エネルギー庁の補助金採択事業者の一覧(9月27日時点)によれば、東京電力エナジーパートナー(東京電力ホールディングス傘下)、SBパワー、NTTドコモなど、大手電力と新電力の計21社が採択済み。つまり早くも21社が今冬に節電プログラムを実施することを表明している。
今夏に節電プログラムを実施した電力会社(次ページで詳細)で前出の一覧にまだ載っていない会社が多数あり、今冬の実施を表明する会社数はさらに増える。
節電プログラムとひとくくりにいっても、月単位の電力使用量を前年同月と比べて評価する大ざっぱなものもあれば、前日にメールなどで節電時間帯を指定した上で精密な節電量を評価するものもある。後者の方が、近年叫ばれている電力需給逼迫に対する効果は高い。
後者のような精度の高い節電プログラムを提供するベンダー大手3社は、SBパワー(ソフトバンク100%子会社)、インフォメティス(ソニーから2013年にカーブアウト)、エネチェンジだ。
次ページでは、この3社の顧客獲得戦の状況や思惑といった内情に迫る。さらに、ダイヤモンド編集部の取材により、ある電力大手が内製の節電プログラムを引っ提げて、顧客獲得戦に乗り出していることが分かった。この新たな戦いも追う。