2021年度の新電力販売量13位で、東北電力と東京ガスが出資するシナジアパワーは8月、小売り事業からの撤退を表明した。東京電力系のテプコカスタマーサービスなど、他の新電力大手も事実上の撤退戦に突入している。特集『電力崩壊 業界新秩序』(全9回)の#6では、撤退戦の最前線を追う。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
東北電力・東京ガス系の新電力
11月末で撤退「採算取れない」
2020年度から採算の取れない状況が続いており、電力供給にかかる費用の改善の見通しが立たない中で、これ以上の事業継続が困難――。
新電力大手のシナジアパワーが今年8月8日、小売り事業を11月末に終了すると発表し、業界内外に衝撃が走った。同社は撤退理由として燃料価格高騰や卸電力市場である日本卸電力取引所(JEPX)の取引価格高騰の長期化を挙げた。
同社は東北電力と東京ガスの合弁会社として15年に設立された。22年3月期決算は純損失28.4億円で、債務超過額51.6億円。かなり厳しい状況に陥っていた。大手電力の東北電力と大手新電力の東京ガス(電力販売量で21年度新電力業界2位)がバックに付いて支援しても、あまりにも先行きが厳しいため苦渋の決断をしたようだ。
新電力業界はいずれも経営が厳しく、帝国データバンクによると、今年6月8日時点では新電力約700社(21年4月までに登録)のうち、104社が「倒産・廃業、事業撤退、契約停止」していた。ダイヤモンド編集部が作成した経営危険度ランキングでも、厳しい状況が判明した(詳細は本特集#7『新電力「経営危険度」ランキング【大手23社】5位エネット、1位は?』参照)。
事業撤退表明はなくとも、客の大量離反を織り込んだ急激な値上げに踏み切った新電力もあり、猫もしゃくしも仁義なき“撤退戦”に突入している。
19年2月には新電力における電力販売量トップに立ったこともある、東京電力エナジーパートナー(東電EP)完全子会社のテプコカスタマーサービス(TCS)。同社の今年前半の動きから、新電力“撤退戦”の内実に迫っていく。