オフィスではこうした体操のほかにも、同じ姿勢を長時間取らず、飲み物を取りに行く、お手洗いで席を立つなど、一時間ごとに少し歩くだけでも、ねこ背の改善に結び付くという。

 さらに、就寝前にCKCのストレッチを取り入れると、副次的な効果が得られるそう。

「たとえば、次のようなストレッチがおすすめです。うつ伏せになって、腕だけで上半身を起こし20秒キープ。これを3回繰り返すと、体の前面にある『フロントライン』のファシアを伸ばすことができます。寝る前に行うと、副交感神経が優位になるため寝付きが良くなり、次の日の疲れの取れ方も違いますよ」

うつ伏せの状態から腕だけで上半身を起こすうつ伏せの状態から腕だけで上半身を起こす。足は床についたままの状態だ 画像提供:『ねこ背 何歳からでも自力で治せる!整形外科の名医が教える最新1分体操大全』(文響社)

 当然だが、こうしたストレッチを1回行えば、すぐにねこ背が正しい姿勢になるということではない。

「実は、ねこ背を改善する運動の習慣化が最も大きな課題です。何年も積み重ねた体の姿勢がねこ背を招いていることを考えると、正しい姿勢は一朝一夕で身に付くものではありません。飽きずに継続して行うのが理想です」

 歯磨きのように、やらないと気持ち悪いと感じるようになればしめたもの。やりすぎは禁物だが、ねこ背改善の体操を日常に取り入れて、背筋の伸びた健康的な体を目指してみるのはいかがだろうか。

高平尚伸氏
北里大学大学院医療系研究科整形外科学教授。北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科教授。専門は股関節外科学。運動器全般の新しい運動療法や姿勢についても造詣が深く、痛み治療のトップランナーとして全国的に知られている。東京オリンピック・パラリンピックには、世界各国の選手対応ドクターとして参加。日本整形外科学会専門医、日本人工関節学会認定医、日本スポーツ協会公認スポーツドクターなどのほか、サッカー柏レイソルのメディカルアドバイザーも務めている。