当校では、地元の国公立大学を中心に、例年大阪大学を第1志望に挙げる生徒が最も多い傾向にあります。学校が「●●大学に何人行かせたい」というのではなく、子どもたちの希望を学校の教育目標とするのが当校のモットーですから、自然と阪大をはじめ国公立大の入試対策に力を入れるのは自然なことでした。

 とはいえ、大学付属校をはじめ中高一貫校が周囲にひしめく中、当校を選ぶ保護者の方々は「受験勉強にまい進するだけでなく、さまざまな体験をして充実した学校生活を送ってほしい」というニーズも高いのです。特段、推薦入試に特化した対策をしてきたつもりはないのですが、そのニーズに応えながら難関国公立大の合格実績も両立できるよう取り組んできたことは、結果的に推薦入試との相性が良かったのかもしれません。

雲雀丘学園中学・高等学校 中井啓之校長雲雀丘学園中学校・高等学校の中井啓之校長。2022年より兵庫教育大学大学院学校経営コース客員教授も務める

――受験勉強一辺倒ではなくさまざまな体験をさせることが、結果的に推薦入試にも良かったということですね。

 以前、くしくも阪大に勤務する先生がお忍びで当校の説明会に来られたことがあり、お話をお伺いすると「大学において、学生たちの学びに向かう姿勢が弱い」と嘆いておられました。大学入学後に何をしたらよいか分からず、授業や実習への意欲に乏しかったり、共同研究をしようにも他人とコミュニケーションがうまく取れなかったりする学生が、阪大ほどの最高学府においても存在するというのです。

――私立学校では普通コースとは別に、入試から優秀な生徒だけを集めた難関大受験コースを設けることで大学の合格実績を上げる手法が定石です。しかし雲雀丘ではその難関大受験に特化したコースを廃止されたと聞きました。

 当校では、2015年にそれまで複数に分かれていたコースを一本化し、19年には「選抜・特進」という言葉をコース名から外しました。中学、高校生活をただ受験勉強に費やすのではなく、大学や企業と連携した実践的教育「探究プロジェクト」をはじめとする課外活動を通じた豊かな学びを提供し、大学、そして社会に貢献できる卒業生を輩出していきたいと考えています。

Key Visual by Kaoru Kurata, Kanako Onda