「静かで控えめ」な内向型の性格を武器に変え、怒鳴り散らす相手にどう対応すればいいのか。また、「社交下手」「プレゼン下手」を逆手にとることができるのか?「静かな人」の自己肯定感を爆上がりさせる、と絶大な支持を受けている書籍『「静かな人」の戦略書──騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法』について、担当編集者の三浦岳さん(ダイヤモンド社)に聞いていきます。(書籍オンライン編集部)
>>前編「『社交的で明るい人』と『内向的で静かな人』の人生の歩みの大差」はコチラ
「戦略書」の雰囲気を生かしたデザイン
――黒く縁どられたモノクロのカバーは、すごく斬新で、「静かな人」のコンセプトにもぴったりに感じました。このデザインは、かなり早期にまとまったのですか?
三浦岳さん(以下、三浦) デザイン事務所tobufune(とぶふね)さんのアイデアです。
私としては、「静かな感じで戦略書っぽい、という感じにしたい」くらいのすごくぼんやりしたご相談をした程度で、そこから一発で出してくれました。
ほかにも同時に面白いアイデアをいろいろとご提案くださったのですが、この案は、「引いた感じがかえって目立つ」というのが、静かな人的な逆張りの戦略らしくて面白いかと思いました。
――たしかに! ただ、暗めの縁取りがあるデザインは、店頭で本が小さく見えるとか、コピーのスペースが小さくなるなどで、一般的には嫌がる編集者が多い印象です。
三浦 そうですね。私はふだん帯にすごく宣伝コピーを詰め込むので、このデザインだと、帯の文字を置けるスペースが文庫本より狭い、という点がネックでした。
まあでも、コピーをたくさん詰め込むほどいいのかというと、そうとも限らないかもしれないと思いました。今回は「静かな人」だと言っているわけだし、うるさくごちゃごちゃ入れないで、デザイン優先でやってみようということで、この案を採用させていただきました。結果、各所で評判が非常によく、大正解でした。
「感情的に怒鳴ってくる相手」にとっさにどう対応するか?
書籍編集者(ダイヤモンド社書籍編集局第一編集部編集長)
出版社2社を経て、2014年にダイヤモンド社入社。『Invent & Wander』『1兆ドルコーチ』『父が娘に語る美しく、深く、とんでもなくわかりやすい経済の話。』『シリコンバレー式超ライフハック』『考える術』などを担当。
――本書はストーリーがありつつ、行動や思考の具体的なアドバイスに満ちています。これから読む方におススメしたい、または反響が大きかった章や項目はどこですか?
三浦 「『他人の感情』にいちいち振り回されない」という章があるのですが、ここをぜひ読んでみてほしいです。
この章に、仕事でトラブルがあって、著者が呼ばれて会議室に行くと、中にいた相手がものすごい剣幕でガーッと言ってくるという場面があるんです。
これがあまりに唐突で、著者はぴたっと思考停止してしまいます。
「無意識に脳の防御機制が働いたかのようだった」
「私はただ突っ立って、耳を傾けるしかなかった」
と書かれていて、たしかに自分もそうなりそうだと共感しました。
本書でも書かれているのですが、内向型は「脳が即座の反応に向いていない」そうです。外向型の人みたいに当意即妙なリアクションができない。しかも内向型は「他人の感情を強く感じ取ってしまう」人が多くて、「外部からの刺激に敏感」という特徴もある。
つまり、もともとその場その場でぱっぱっとリアクションできないのに加えて、相手のたかぶった感情を敏感に察知しやすく、大きな声や強い言葉にはドキッとなってしまうという内向型にとって、これは最悪のシチュエーションなわけです。
――自分もフリーズしてしまいそう……。
全部聞いてから、一言で冷静に整理する
三浦 この状況に著者はどう対応したのか。
詳細は、面白いのでぜひ本で読んでいただきたいのですが、簡単に言うと、相手がすべてを言い切るまで黙って聞いて、いったん落ち着いたところで、そばにもう一人いた関係者に「それで、いまいったいどういう状況なんですか?」と冷静に確認した、ということでした。
つまり、感情的なやりとりの土俵に乗らないで、落ち着くところまで待ってから、冷静に整理をして仕切り直した。
ここを読んで、たしかにこれしか解決策はないし、これをクールにできるように訓練していくのが「静かな人」の道なのかな、と思いました。
――静かな人なりの道がある、っていいですね。
「自己肯定感」が変わる
三浦 私もそうですが、「話し下手」だったり、「社交下手」だったり、「プレゼン下手」だったりで、日々凹んだりグッタリしている内向型の人は多いかと思います。『「静かな人」の戦略書』は、そういった内向型の特徴のアザーサイド、つまりプラス面とその活用法をさまざまに教えてくれます。
「『優柔不断』は裏を返せば『思慮深い』ということだし、『心配性』はリスクマネジメントにおいては有用な資質だ」と著者は言います。
読んでいると、自分も結構いけてるのではないか、と自己肯定感が上がって、今度はこの感じでやってみようかなと楽しみになってくるほどです。
――三浦さんは、自分の持ち味を熟知されている印象で、話すのがうまくいかなくて凹んだりグッタリする、というのは意外です。
三浦 いえ、日々凹んでいるんです(笑)。でも本書を読んでいて、たとえばプレゼンについてのアドバイスなどは個人的にとても背中を押されました。
それは、外向型みたいにその場で流れるように面白い話をすることをあきらめろ、というものです。しかし、むしろ内向型らしく完璧に準備していき、その成果を当日出せば、その質は外向型の当意即妙のパフォーマンスの上を行く、と。
プレゼンに限らず、アドリブをあきらめて準備に全振りするというアプローチにこそ、自分の強みはあるのかもしれないな、と吹っ切れるような思いがしました。