ファーストリテイリングやローソンのトップを歴任し、2021年にロッテホールディングスの社長に就いた玉塚元一氏は、幼稚舎から慶應義塾の生粋の「慶應ボーイ」だ。特集『最強学閥「慶應三田会」 人脈・金・序列』(全17回)の#13では、ダイヤモンド編集部の取材に応じた玉塚氏が、自身の経営哲学の根幹に据える慶應義塾での教えを語った。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)
受け継がれる福澤諭吉の理念が慶應の強み
玉塚氏の軸となった「不可能を可能にす」
――幼稚舎からの「慶應ボーイ」ですが、慶應義塾が持つカルチャーとは何ですか。
慶應はやはり(創立者の)福沢諭吉先生が偉大であるということに尽きます。例えば、『学問のすゝめ』の中に出てくるようなことが、今でも理念や文化として受け継がれています。
福澤先生が咸臨丸で米国に渡ったのが1860年。それから明治維新を挟んだわずか30年の間に、士族の解体や廃藩置県などもあり、とてつもない変化がありました。
その中で、米国で近代国家を目の当たりにした福澤先生は封建的な身分制度に疑問を持ち、今の仕組みでは列強に追い付けないので、学ばなければならないと唱え、慶應義塾を創立しました。
企業も組織もそうですが創業者のDNAや魂はものすごく重要です。私はたまたま慶應に長くいたので、事あるごとに福澤先生の考え、例えば「独立自尊」などの思想を学び、腹落ちさせてきました。
――慶應で学んだ教えで今でも残っていることは何ですか。
やっぱり私の場合はラグビーが大きいですね。福澤先生と同じぐらい尊敬されていた(元塾長の)小泉信三さんの言葉に「練習は不可能を可能にす」があります。これが、自分にとって今も一つの大きな軸です。
当時、慶應ラグビー部は全国から優秀な選手が取れたわけではありませんでした。それでも目標を掲げて、死ぬほど努力するわけです。それで、私の時代はたまたまライバルの明治大学にも早稲田大学にも勝ち、全国大学ラグビー選手権大会でも準優勝しました。
死ぬほど努力をして結果を出す、ということを実体験できたことが資産ですね。あんなにひどい練習をすると大抵のことでは、死にはしないと思うようになります(笑)。努力すれば巨象も倒せるということが体感できたことが、ビジネスの世界でやっていく上でも自信になっています。
――慶應三田会は強固なつながりがあり、ビジネス界で慶應の力は圧倒的です。なぜでしょうか。
次ページでは、玉塚氏がビジネス界で慶應のパワーが圧倒的な背景について明らかにする。また、OBとしてグローバル化など母校に寄せる期待も語る。