かつては東京大学など国立上位校だけに首脳への道が開かれていたメガバンクで慶應閥の躍進が目覚ましい。今年、慶應義塾の「最高幹部」評議員に三菱UFJ銀行の前頭取が就任。三井住友銀行ではトップ候補に慶應OBが浮上している。特集『最強学閥「慶應三田会」 人脈・金・序列』(全17回)の#14では、メガバンクにおける慶應閥の最新の勢力図を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)
三菱UFJ、半世紀ぶりに慶應卒首脳
慶應義塾の評議員に三毛氏が立候補
「もう慶應の時代ですよ」
国立上位校卒業のある三菱UFJ銀行の行員はそう嘆息を漏らす。
旧三菱財閥は歴史的に慶應義塾との縁が極めて深い(本特集#12『慶應義塾に根付く三菱・三井「二大財閥」人脈、福沢諭吉が築いた財界に強い慶應王国』参照)。三菱「御三家」の一角、三菱UFJ銀行でも慶應閥は強固である。
それでも、歴代トップは別だ。頭取の条件は、東京大学か京都大学を卒業し、銀行中枢の経営企画畑出身であることだった。実際、近年で頭取に上り詰めたのは、ほぼ東大出身者だ。
だが、この慣例が崩れたのは2017年のことだ。東大出身の当時頭取の小山田隆氏(1979年旧三菱銀行入行)が体調不良を理由に電撃退任。後任に副頭取だった三毛兼承氏(79年同)が起用されたのだ。
三毛氏は慶應卒で、幼稚舎上がりの「慶應ボーイ」。慶應出身の頭取は、旧三菱銀行時代の61年から3年間頭取を務めた宇佐美洵氏以来となる。半世紀ぶりに慶應出身の頭取が誕生したのだ。
現在は三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)会長の三毛氏に今年、注目が集まった。それが母校である慶應の「最高幹部」評議員に立候補し、選任されたのだ。旧三菱銀行時代を含め首脳経験者の評議員が誕生するのは、やはり宇佐美氏以来のことである。
今回の評議員選挙では、三菱UFJFGの元会長、沖原隆宗氏も再任された。沖原氏は旧三和銀行出身ではあるが、メガバンクが複数人を評議員に送り込むのは極めて異例のことだ。冒頭の行員の発言も慶應閥のさらなる台頭を反映したものといえよう。
では、三菱UFJをはじめとするメガバンクで、慶應閥はどこまで拡大をしているのだろうか。次ページでは、三菱UFJの役員の出身校を徹底分析し、最大学閥に浮上した慶應閥の勢力図を紹介。慶應OBの出世レースの実態も明らかにする。
また、ライバルの三井住友銀行では、次期頭取の有力候補に慶應OBが浮上している。このOBの実名とともに同行での慶應閥の勢力図を示す。