「Aという意見をもつAさん」と「Bという意見をもつBさん」が話し合いをするとしよう。まず対話の段階では、双方が持つ意見の「違い」を認め合う。そして、AとBのさまざまな情報を比較検討し、最終的にどちらにするのかを決める。

 このとき、自分たちがいま「対話」と「決断」のどちらのフェイズで話しているのか、意識を共有しながら進めることが大切だ。

◇こんな「残念な話し合い」見たことありませんか?

「残念な話し合い」ももちろんある。

 たとえば、対話で相手の意見をいったん受容することができず、最悪の場合「論破」してしまうケースだ。相手が何を言っても、「いや、そうじゃなくない?」「おかしくない?」と否定や反論を繰り返す。自分に自信がない、相手より優位に立ちたいと思いこんでいるときに陥りやすい。あるいは、自分の意見をただちに表明することが「相手への貢献」になると思い込んでいるケースもある。こういう人が多い話し合いでは、雰囲気が悪くなってしまう。

 逆に、「対話が大切だ」とひたすら対話を行って、議論や決断をしない「対話ロマンティシズム病」もある。意見の違いが表出するだけで、いつまでもわかり合えない。さらには「いろんな意見があって当然だよね」と、相対主義的な話し合いに終始して物事が先に進まない「みんな違ってみんないい病」もよく見られる。

 こうした状態を続けていると、最も話し合いから遠い「対話ゼロで、ただちに多数決」の状況に陥ってしまう。

【必読ポイント!】
◆対話の作法
◇対話を具体的につかむ

 対話という言葉のイメージは人によってそれぞれだ。カフェで談笑しているイメージかもしれないし、外交を想像する人もいる。対話について具体的につかむには、「非対話的なもの」を考えるとよい。それには次のような3種類がある。