1つ目は、複数の聞き手に対して話者が一方向で話す、学校などの一斉授業の形式だ。対話には「やりとり」が発生する。

 2つ目は、部下と上司のような非対称な関係で行われる「業務報告」だ。上下関係の中でフィードバックや助言を行ったりするのも、対話ではない。

 3つ目は、立場や役割に基づいた発言だ。客観的であることが重んじられているビジネスの現場での「○○部としては」「会社としては」といった言葉からは、「私」という主語が排除されている。

 つまり対話とは、「フラットな関係のもとで行われる、役職や立場を越えたコミュニケーション」であり、「私」が大切になるものと言える。

◇問いのつくり方

 対話をうまく機能させるには、「当事者としてまだ解決できていないテーマ」が不可欠だ。対話に参加するすべてのメンバーが「当事者性」を感じられるよう、目的を把握してもらうことは、ファシリテーターの重要な役割である。

 そして、「フォーカスされた問い」を設定する。コツは、まず「問いを開く」ことだ。自由に意見を表明できるオープン・クエスチョンにする。次に、「問いで解像度を上げる」。具体的な問いを通して、お互いの脳裏が透けて見える状態をつくろう。そして、「問いと自己を関連させる」。問いを、対話の参加者が過去に経験してきたことに紐づけるのだ。時間軸を提示する、定量的に踏み込むといったことも効果的だ。

 たとえば、「ここ3カ月で、あなたの職場で気になった出来事を1つ教えてください」という問いにすると、話す内容をイメージしやすくなる。

◇自分を持ち寄り、互いのずれを知る

 対話では「自分を持ち寄ること」が必要だ。これは、「自分が、ひそかに抱きしめてきた意見や価値観を、他者の目の前に、そっと差し出すこと」を指す。