米韓と北朝鮮による
警告の応酬

 米韓両国は3日、ワシントン郊外のペンタゴンで定例安保協議を開催、「米国の戦略資産を常時配備レベルで朝鮮半島に展開するとともに、核の傘など米国が提供する拡大抑止に韓国の声を反映できる基盤を用意した」と合意した。

 李鐘燮(イ・ジョンソプ)国防相によれば、米国は「朝鮮半島とその周辺への戦略資産展開の頻度と強度を拡大し、米戦略資産を常時配備に準ずる効果があるよう運用する」という。

 これまで、拡大抑止は米国の一方的な履行意思に依存してきた。このため朝鮮半島が有事の際、米国が自国に対する核攻撃を覚悟してまで拡大抑止公約を守るか、どうか疑いの声があった。しかし、オースティン国防長官は今回、「米韓同盟は強固で、米国は核、通常兵器、ミサイル防衛を含むすべての範囲の拡大抑止を約束する」とした。

 さらに両長官は「米国・同盟国・友好国に対する、北朝鮮の戦術核を含むいかなる核攻撃も容認できない」とし、こうした行動は金正恩政権の終末を招くと警告した。これは米韓が定例安保協議を通じて発信できるメッセージでは最も強度が高く、金正恩氏が最も忌み嫌う言葉である。

 その一方、北朝鮮外務省は「ビジラントストーム」の延長を受けて4日、「自主権と安全利益を侵害しようとする敵対勢力のいかなる試みに対しても、決して黙過せず最後まで超強硬対応を続ける」と反発した。

 さらに同日夜朴正天副委員長は談話で「米国と南朝鮮による無責任な決定は、現状を統制不能な局面に追いやっている」「米国と南朝鮮は自分たちが取り返しのつかない非常に大きな失敗を犯したことを知るようになるだろう」と主張した。同副委員長は米韓空軍の合同演習に対し、以前にも「むごたらしい代償をもたらす」などと語っていた。

朝鮮半島で高まる
戦術核の脅威

 北朝鮮における戦術核開発の動きと9月の「核先制使用法制化」発表を危惧する尹政権は、米国の戦術核再搬入と戦略資産(兵器)の韓国常置に関心を持っているようだ。北朝鮮の戦略核は自滅を覚悟しない限り使用できない武器ではあるが、戦術核は場合によっては実際に使用可能な直接の脅威になり得るからである。

 しかし、米国は在韓米軍基地のほとんどは北朝鮮の短距離ミサイルと長射程砲の脅威にさらされているため、戦略資産の常駐にも核兵器の再搬入にも慎重な姿勢のようである。北朝鮮の戦略核は100個前後とされ、核の再搬入は心理的な慰めとなっても強力な抑止効果にはなり得ないとの見方でもある。

 しかし、仮に北朝鮮が実際に使用するかもしれない戦術核を開発すれば、韓国にとっては深刻な脅威となり、状況は変わるかもしれない。その場合、米国の戦術核の再搬入は、北朝鮮に戦術核使用を思いとどまらせる重要な抑止力になるかもしれないという。

 イ・ヨンジュン元韓国外交部北核大使によれば、戦術核兵器は都市単位の面積を廃虚にする広島の原爆よりはるかに小さい1キロトン前後の兵器で、戦場で半径0.5~1キロほどを廃虚にするために使われる。放射能の拡散も限定的だ。しかし、小さな核兵器を造るのは非常に高い技術が必要で、現在は米国・ロシア・イスラエルしか戦術核を保有する国はないとされている。