Jアラートの遅れで
明らかになった重大な欠陥

 米韓両国が北朝鮮との対決姿勢を高める中、日本の対応の遅れが目立っている。

 3日朝、北朝鮮のICBM発射を受け、「Jアラート」が発動された。午前7時50分、「北朝鮮からミサイルが発射されたものとみられます。建物の中、または地下室に避難してください」との第一報が出された。

 続いて午前8時の第2報は「先ほどのミサイルは午前7時48分頃太平洋へ通過したとみられます」という内容であった。

 さらに1時間後、浜田靖一防衛相は「日本列島を越えず、日本海上で消失したことが確認された」と明らかにした。これについて松野博一官房長官は「発動された時点では、ミサイルが軌道として日本列島上空を通過する可能性があった」と弁明した。

 つまり、避難要請を出した7時50分時点で、すでにミサイルの通過予想時刻を過ぎていた。さらに実際にはミサイルは日本列島を越えておらず、日本海上空で消滅していたのである。

 こうした事実により、北朝鮮のミサイル発射における情報収集体制、伝達体制に重大な欠陥があることが浮き彫りとなった。これを受け、岸田文雄首相が申し入れ、尹錫悦大統領と電話会談を行ったが、いずれにせよ、日韓、日米韓で北朝鮮への対処でより緊密な連携が必要なことは明らかである。

日韓首脳の対話が欠如すれば
有事の邦人保護で大きな支障に

 朝鮮半島における緊急事態への備えは、現実的な問題となってきた。現在韓国に滞在する在留邦人は4万人といわれ、これに加えて、観光客が万人単位で存在する。こうした人々をいかに迅速かつ安全に日本に避難させるかが喫緊の課題となる。

 邦人退避の基本は、緊張が高まった時点で、政府の渡航自粛勧告と民間機を利用した退避を行うことであるが、南北の戦闘状態が偶発的、突発的に起きる可能性もある。その場合には民間機の利用は困難となり、自衛隊機や艦艇の派遣による避難、または米軍機を利用しての避難ということになる。

 しかし、韓国では自衛隊機、自衛艦の受け入れには慎重であり、それには高度な政治決断が必要となる。

 ただ、在日の米軍基地は朝鮮半島有事の際、後方支援基地となり、日本は朝鮮半島有事に必然的に巻き込まれることになる。また、在韓の米国人の避難先としては日本が有力であるので、日本にとって交渉の余地はある。

 その場合にも現在のような日韓関係が続く場合には、交渉の足かせとなるであろう。