NEM流出事件を受け、無秩序だった仮想通貨業界を律するために設立された、金融庁が認可する自主規制団体「日本暗号資産取引業協会」、通称JVCEA。だが規律を策定するどころか、JVCEAの協会運営自体が混乱を来していることが発覚した。特集『マネックス 仮想通貨敗戦』(全5回)の#4では、仮想通貨ビジネスの“権益”確保を狙うコインチェックのいびつな「実効支配」を浮き彫りにする。(フリーライター 村上 力)
自主規制団体JVCEAに労組結成の異様
コインチェックの「実効支配」で混乱
金融庁はコインチェックの「NEM流出事件」を受け、2018年10月、一般社団法人日本暗号資産取引業協会(JVCEA)を、資金決済法上の自主規制団体として認定した。JVCEAに自主規制ルールを策定させるなどして、無秩序だった仮想通貨業界の健全化を目指した。
初代会長はマネーパートナーズグループ代表の奥山泰全氏だったが、20年6月にマネックス出身のビットフライヤー社長、三根公博氏が会長に就任。三根氏が同社社長を退任したことで、21年6月からコインチェック社長の蓮尾聡氏が会長となった。
蓮尾氏は東京大学法学部卒業で、マネックス元CFO(最高財務責任者)。マネックス社長CEO(最高経営責任者)の松本大氏の腹心とされる人物だ。
ところが今年に入り、仮想通貨業界を律する立場にあるJVCEAの混乱が顕在化している。
それを象徴するのが、今年6月の社員総会の出来事だ。
JVCEAは社員総会で、金融庁OBの古瀬保弘氏を専務理事にする役員人事を決議する予定だった。古瀬氏は今年2月にJVCEA会長補佐として参画し、5月に事務局長に就任していた。
ところが総会直前の6月22日、JVCEA職員が「JVCEA労組」を結成、公然と古瀬氏の事務局長「解職」を要求したのである。
これにより、古瀬氏の専務理事選任を急きょ取り下げることとなった。その後JVCEA労組は、行政機関の労働組合の連合体である「政府関係法人労働組合連合」に加入し、協会内労組として今も活動を継続している。
きょうび、「労組結成」という事態は通常起こり得ない。混迷の背景には、JVCEAを実効支配するコインチェックによるいびつな協会運営があった。