マネックス 仮想通貨敗戦#3Photo:PIXTA

コインチェックが米特別買収目的会社(SPAC)を通じた米ナスダック上場を公表した1カ月後の、今年4月。合併予定のファンドが、業界首位を争う仮想通貨取引所大手ビットフライヤーを買収し、コインチェックとの合併を計画していたことが分かった。計画が実現すれば国内市場シェアの半分を掌握する連合となる。特集『マネックス 仮想通貨敗戦』(全5回)の#3では、仮想通貨市場「支配」の野望を暴露する。(フリーライター 村上 力)

800億円でビットフライヤーを買収
コインチェックとの統合計画の全貌

 マネックスグループは今年3月22日、コインチェックを最大2100億円で米特別買収目的会社(SPAC)を通じて米ナスダックに上場する計画を公表した。

 SPACとは、一定期間内に非上場会社と合併することを目的として投資家から資金を集めた「空箱」の上場会社である。

 投資ファンドなどのSPACスポンサー(創設者)は、合併が成就すれば巨額のスポンサーフィーを得られる。一般投資家は、SPACスポンサーの経営手腕などを評価して投資し、合併後に被買収会社が成長すれば利益を得ることができる。被買収会社は、通常の上場手続きよりも早期かつ簡単に資金調達と上場ができるという仕組みだ。

 コインチェックが合併する予定のSPACは、米サンダーブリッジキャピタルのビークルThunder Bridge Capital IV(以下、TBCIV)である。サンダーブリッジキャピタルは決済システム会社のSPAC上場を手掛けた実績があった。

 コインチェックがTBCIVと株式交換で合併することで、マネックスのTBCIVの持ち分は74%となる。ディールの実行は「2022年内」とされた。マネックスはこれにより、コインチェックを取得価額の50倍の企業価値でイグジットできるはずだった。

 だがSPAC上場公表後、コインチェックの業績は転落。直近の決算説明会資料では「22年内」という文言もこつぜんと消えた。

 実はその間、合併予定のSPACは驚くべき計画を模索していた。

 コインチェックのSPAC上場公表から1カ月後の4月22日、国内で首位を争う仮想通貨取引所ビットフライヤーの株主に、買収のLOI(意向表明書)を送付していたのである。

 LOIには、800億円でビットフライヤーを買収し、「最終的にコインチェックとビットフライヤーの企業結合を行う」と明記されていた――。