今年起きた暗号資産(仮想通貨)の急激な値下がりは、取り付け騒ぎや投げ売り・危機の伝播といった金融危機の典型的な特徴を一通り備えている。そこに欠けているのは銀行だ。経営破綻した暗号資産交換業者のボイジャー・デジタル・ホールディングス、セルシウス・ネットワーク、FTXトレーディングの3社と暗号資産ヘッジファンドのスリー・アローズ・キャピタルが提出した連邦破産法第11条の適用申請書を調べても、各社の大口債権者に銀行の名は見当たらないだろう。申請書の全容は明らかではないが、各社は大口債権者の多くを顧客あるいは他の暗号資産関連企業と記している。言い換えれば、暗号資産交換業者は閉じられた輪の中で活動し、その中でお互いに密接な関係にあるものの、既存の金融とは重要なつながりがほとんど見られない。一時は約3兆ドル(約418兆円)相当の規模に達した資産クラスがその価値を72%失い、著名な仲介業者が破綻しても金融システムに目に見える影響が出ていないのは、こうした理由からだ。