オンラインでは
議論が活性化しない
本連載で2回にわたって、東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授と対談した(2022年11月7日公開:「『オンライン会議は脳にとって質の悪い紙芝居』脳科学者が訴える危険性」、11月21日公開:「『スマホ依存で人類絶滅』を脳科学者が本気で危惧する理由」参照)。研究データに基づいた興味深い知見をうかがうことができた。その中でオンライン会議が議題にのぼったが、対談を振り返り、また私自身のこれまでの経験も踏まえて、オンライン会議についての個人的な見解を述べたいと思う。
一言でまとめれば、オンラインには限界がある。ただし、可能性もあると言える。
視線がずれていること、音声と画像の微妙なタイムラグなどから、脳はオンライン会議での一部始終を出来の悪い紙芝居として見ている。さらには、オンラインでの会議によるセッションでは、発言が重なると聞きづらくなるので、他人が話し終わるのを待ち、しばしの間があって、別の人が話し始めるのが普通だ。この間断によって、議論は白熱しない(間をばかにするなかれ。漫才を見よ)。
考えながらしゃべったり、生煮えの話をしたりしにくく、まとまった話しか出てこない。飛躍の可能性が少ない。場を共有しているという安心感がなく、議論が紛糾してしまうと話がどこへ転がるかわからず、収めようがないため、参加者は、はなからできるだけ議論が枠からそれないように、おもんぱかって発言しようとする。冗談も出にくい。ファシリテーターも対面よりもはるかに強く議論が広がるのを抑制してしまう。
したがって、オンラインのセッションで、多くの意見が出て、侃々諤々(かんかんがくがく)のディスカッションが行われ、当初は予想もしなかったような素晴らしい結論にたどり着き、充実感を得られるといった可能性はかなり低い。先日の対談によれば、オンライン会議では、感情をつかさどる脳の部位が動かず、同期もしにくいのだから仕方がない。