社会構成主義と
個人主義の違い
ただし、オンラインはやっぱり嫌だという方もいる。その背景には、ファシリテーターの思考の違いがあるように思われる。
社会構成主義とは、私たちの現実の認識は、客観的に測定できるものではなく、関係者同士のコミュニケーションによって意味づけられ、合意されることで形成される、という考え方です。これに対置される考え方の一つは「個人主義」です。現実やアイデアは「個人の頭のなか」に存在すると考え、対話による意味の生成や集団の関係性を重視しない考え方です。無意識のうちに「個人主義」を価値観の前提としているファシリテーターは、ワークショップを、個人のアイデアの情報収集や投票の場として考えます。結果として、ワークシートに個人のアイデアを記入させたら、グループで個人のアイデアを共有する時間はとるものの、グループワークでお互いの意味づけをすり合わせたり、新たに意味を生成したりすることなく、個人のアイデアをブラッシュアップさせることに重きを置きます。(安斎勇樹、塩瀬隆之著『問いのデザイン』学芸出版社、213ページ)
上記はファシリテーションの方法を述べた書籍からの引用であるが、オンラインで会議がうまくできない人はここで言う「社会構成主義」の人であろう。
私は社会構成主義も個人主義もいずれも重要で、どちらのアプローチもできた方がよいと考えている。
ただし、オンラインにおいては、社会構成主義的な立場でファシリテーションを実現することがなかなか難しい一方で、個人主義的な方法は、むしろ対面時よりも没入してもらえ成果が上がるように思われる。
皆が集まって、何かを生み出すような社会構成主義向きの内容はバッサリ切り捨て、オンラインでは個人主義的なセッションを中心にしている。これは普段の業務にも応用できるのではないかと思う。いずれにせよ、会議の適切な運用にはファシリテーターの高い能力が不可欠である。