通常の業務は
オンラインで事足りる

 結局、オンラインは使えるのか、使えないのか。

 会社における実際のコミュニケーション行動は、議論というよりは連絡と確認と情報共有が圧倒的に多い。これはさっさとオンラインでやってしまえば事足りる(メールでも十分なのだが、確認のためにオンラインで補足しておくのがよい)。正直なところ、会社でのコミュニケーションはこの類いが半分くらいを占める。川島先生もこうした会議ならオンラインでよいと言っておられるところだ。

 次に通常業務で多い、個人が自分の仕事をよりよくするための相談の類い。これは引用で言う「個人主義」なのだが、これも、オンラインで一人、二人を誘ってパパっとやってしまえばすぐにできるし、やれば有益だ。

 ただ、問題は会社なら、ちょっと時間のありそうな人に声をかけることができるのだが、オンラインでは相手探しに苦労するかもしれない。ただ、それもスケジュール表の共有を工夫したり、チャットツールを上手に使ってメンバーを見つけることができれば、それほど難しくはないだろう。

 以上のことから、オンラインでも普通の業務は問題なく進められると思われる。

 しかしながら、やはり「関係者同士のコミュニケーションによって意味づけられ、合意されることで形成される」ような新しい創造の領域に関しては、遠慮ない侃々諤々のコミュニケーションによる脳の同期、そこから生まれる一体感によって、場があたかも一つの生き物のようになっていく感覚がなければ無理だろう。それはやはり対面でなければ難しいと思われる。

 そしてまたそうした空間は、皆がただリアルに集まっただけで生まれるわけではなく、ベースとしての信頼関係、互いの見識・知識に対する関心、全体が達成すべきミッションに対する意欲、これらのものが共有され、レディネス(ことに当たるのに必要な準備状態)が高まったときにはじめて生まれるものだろうから、それ相応の試行の回数を増やしておく必要があるだろう。やはり定期的にメンバーが対面で集まって、じっくりと遠慮なく話をする機会を十分に作っていくことはとても重要だと考えられる。

 逆に言えば、会社に行くのは、「関係者同士のコミュニケーションによって意味づけられ、合意されることで形成される創造物」を生み出すための場とその準備の場だけでよいと言えるかもしれない。

 自分が毎週何日会社に行かなければならないかは、“他者とともに創り出す創造”に関わる仕事がどれほどの比率であるかで人によって変わってくるだろう。あなたの会社が始終、他者とともに新たなものを創り出す“創造の場”なのであれば、出社はそれなりに多くなるはずである。

(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)