写真:会議写真はイメージです Photo:PIXTA

コロナ禍の2年半で、ネット越しに会議をする「オンライン会議」や、学校の授業を行う「オンライン授業」はすっかり日常の風景になりました。しかしこれらは、顔を合わせて行う会議や授業と同じだけの成果が得られるのでしょうか? 東北大学で実験を行ったところ、オンラインでは最低限の情報伝達はできても、共感を生み、協調関係を築くことに結びついていないことが分かりました。オンラインにおいて、人間の脳は「ボーッとしている」のと同じ状態だったのです。(医学博士 川島隆太)

※本記事は『オンライン脳 東北大学の緊急実験からわかった危険な大問題』から抜粋・再編集したものです。

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人間は協力しあうと「脳が同期してくる」

 コロナ禍で当たり前になった、人と人とが直に顔を合わせることなく会話する「オンラインコミュニケーション」。オンラインコミュニケーションでは、共感が生まれないのではないか、またオンラインコミュニケーションの氾濫は、大きなリスクをはらんでいるのではないか? 前回はこの問題意識の下、顔を直接見ながら同じ場所で対面で会話をするのと、Zoomを使ってオンラインで会話をするのとでは、前者で生じる「共感」が後者では生じないこと、そしてまた、それぞれ両者において人間の脳がどのように働いているのかという実験の結果を紹介しました。

 今回はまた別の、分かりやすい実験を紹介しましょう。複数の大学生にしりとりをしてもらった実験です。

 全員が協力しながらしりとりする、ほかの誰とも協力せずバラバラに各自の頭の中でしりとりする、と条件を変えてしりとりをしてもらい、共感するとき働く脳の領域で、同期がどのくらい起こっているかを測定したのです。

 しりとり実験で、こうした周波数が出ているときの脳の活動を調べると(可視化した脳活動の測定であって、脳波の測定ではありません)、複数の人が一緒に共同作業するときは互いの同期率が非常に高い。複数の人が同じ場所でおなじ作業を各自バラバラにするときは、同期率が低い――と、分かってきました。

 たしかな手応えがありました。私たちの仮説はかなり正しそうだ、ということが見えてきました。