迷走 皇帝なきJR東海#7Photo:JIJI

JR東海の葛西敬之名誉会長は、「正しい」と信じたことを実現するためには敵をつくることもいとわなかった。JR東日本をはじめとしたJR他社ともあつれきを生じていた。例えば、「フルムーン夫婦グリーンパス」などの乗り放題チケットに、JR東海だけが全面協力してこなかった。特集『迷走 皇帝なきJR東海』(全8回)の#7では、葛西氏の死去を受けて、乗り放題チケットの適用対象や、JR東海と他社の関係がどのように変わるのかに迫った。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

全線乗り放題チケットに
JR東海が非協力的だった理由

「JRの場合、社内で『全体最適を目指す』といったとき、全体とは『JR7社』を意味します。でもJR東海の(故)葛西敬之名誉会長だけは違う。彼の全体最適の単位は『国家』なのです。だから話がかみ合わない」

 これはJRグループ幹部による葛西氏の人物評だ。

 実際に、JRグループの共通企画などに葛西氏が異を唱えたことは一度や二度ではなかった。

 例えば、「フルムーン夫婦グリーンパス」や訪日外国人旅行者向けの「JAPAN RAIL PASS」といった乗り放題チケットは、JR東海の東海道新幹線「のぞみ」が対象外になっている。

 次ページでは、葛西氏がJRグループの協調路線にあらがった「真の理由」を明らかにする。また葛西氏の死去後、JR東海とJR他社との関係がどう変わるのか、大胆に予想した。