迷走 皇帝なきJR東海#4写真提供:JR東海/JIJI

JR東海は取引業者に対して強い態度で交渉することで有名だ。日系の鉄道車両メーカーの中では、日立製作所はJR東海と蜜月の関係を維持しているが、川崎重工業と三菱重工業はリニア中央新幹線のプロジェクトから撤退するなど対応が分かれている。特集『迷走 皇帝なきJR東海』(全8回)の#4では、JR東海とメーカー各社との距離感に迫った。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

「理科」に強い川重はJR東海に遠ざけられ
「社会」が得意な日立は受注獲得

 葛西敬之名誉会長が30年近く支配したJR東海は、鉄道車両メーカーとの付き合い方においても、JR東日本などJR他社とは一線を画している。

 メーカーにとってJR各社は、要求水準が高い“面倒”な顧客だが、一方でうまみのある商売相手でもある。

 ある重工メーカー幹部は「海外での受注は入札ごとの一発勝負で、次の入札で負ければ納入がストップすることが多い。これに対して、JR案件は継続受注が可能だ。試作車の段階では大赤字だが、量産まで任せてもらえればメリットは大きい」と内情を打ち明ける。

 だが、葛西氏がJR東海の実権を握ってから、それまで比較的、等距離だった鉄道車両メーカーとの関係は激変した。

 次ページではJR東海と、日立製作所、川崎重工業、三菱重工業など取引先メーカーとの「複雑な関係性」について解説する。また、葛西氏の逝去が取引にもたらす影響についても明らかにする。