JR東海の故・葛西敬之名誉会長は、いかにして政界人脈を構築したのか。特集『迷走 皇帝なきJR東海』の番外編では、2022年12月に『国商 最後のフィクサー葛西敬之』を上梓したノンフィクション作家、森功氏に話を聞いた。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
官邸幹部の警察官僚3人や
大物議員の子弟らを採用
――このタイミングで葛西敬之氏について書こうと思われたのはなぜでしょうか。
安倍晋三政権を取材する中で、葛西さんが政権のキーマンだと分かったので、いつか取り上げたいと思っていました。
そういう中で、ウェブメディア「スローニュース」から声が掛かったので、せっかくなら既存の媒体では扱いにくいテーマをやろうと思い、葛西さんの連載をやらせてもらい、それを大幅に加筆・修正して書籍にしました。
――従来、メディアで葛西氏について掘り下げた記事が少なかったのはなぜですか。
第一に、JR東海はメディアのスポンサーだということ。第二に、葛西さんは政権に非常に近いのでメディアが遠慮しがちだったことが大きいと思います。
――葛西氏はなぜ政権中枢に食い込めたのでしょうか。
葛西さんの政界での活動が際立っていったのは安倍政権ができてからです。安倍さん(元首相)を応援する「四季の会」を2000年代初めに立ち上げ、安倍政権の樹立に貢献しました。その前までは、葛西さんはJR東海の経営者でしかなく、一般的な財界活動にも積極的ではありませんでした。
――『国商 最後のフィクサー葛西敬之』で、葛西氏が旧知の警察官僚たちを政権幹部に送り込んだ経緯を明らかにしています。