メンタルダウン当事者に人事担当者ができること
厚生労働省は、「労働者の心の健康の保持増進のための指針(メンタルヘルス指針)」*4 のなかで、4つのメンタルヘルスケアの推進を提唱している。労働者自身による「セルフケア」、労働者と日常的に接する管理監督者が行う「ラインによるケア」、事業場内の産業医や産業保健スタッフなど「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」、そして、事業場外の機関や専門家を活用する「事業場外資源によるケア」だ。
*4 厚生労働省 メンタルヘルス対策(心の健康確保対策)に関する施策の概要 参照
佐々木 「管理職の心のケアをどうすればいいですか?」と、人事担当の方から相談を受けることがよくあります。メンタルダウンした管理職への適切な対応を1回でも行えばノウハウが身に付きますが、最初は分かりませんし、不安でしょう。「(人事担当者が)病院に一緒に行くのもありですか?」という質問や「休職届を出してほしいけど、メールも電話もなしのつぶて」という悩みもあります。そうしたときは、産業医をはじめ、外部の専門家に相談することが正しい方法といえます。また、案件を自分一人で抱え込んだり、人事部だけで何とかしようとしたりせずに外部の力を借りていく――それが、4つ目の「事業場外資源によるケア」につながります。私も、人事担当者向けの無料セミナーを行っていますし、コロナ禍の現在はオンラインで相談できる手段や窓口が増えていますから、そうしたものを積極的に利用していくことをお勧めします。
人事担当者への支援策として、佐々木さんは“座談会”も行っている。
佐々木 私が開催した座談会には、複数企業の人事部の方が集まりました。匿名参加もOKで、社名もオープンでもクローズでも構わないという設定でした。メンタルダウンした従業員にどう向き合うべきか――それを「みんなで集まって話しましょう」という場です。参加者の発言には正解も不正解もなく、「うちの会社は○○を行っています」「最近、□□のケースに困っています」「本で読んだ△△のことが参考になりました」……と、いろいろな情報交換をしていただきました。そして、こうした会には私のような専門家が加わり、最終的には、人事部の皆さんの姿勢が間違った方向に進まないようにすることが肝心です。メンタルダウン当事者の情報は、社内では限られたメンバーしか共有できませんし、限られた知識では解決できないことも多いので、他社の人事担当者がどういう悩みをどう解決しようとしているのかを知ることが貴重な経験になります。メンタル問題に向き合う人事担当者もメンタルダウンしてしまうことがありますから、守秘義務を果たしたうえで、外部とつながりを持つことは大切だと思います。