従業員のメンタルダウンを防ぐ“根本的解決方法”

 企業は従業員のメンタルダウンを防ぐことが第一義だが、働く者全員の心身が健康であり続けることは難しい。職場に問題がなくても、家庭の事情で心身の調子を崩し、仕事から離れていく人もいる。

 そして、休職していた従業員が復職するにあたっては、人事部の最善の対応が必要となる。

佐々木  メンタルダウンで休職していた従業員の受け入れ方法は広く知れわたっています。模範回答的なものも用意されていて、人事担当の方は、インターネットの情報からも把握することができるでしょう。たとえば、「“休職前の部署”に戻ってもらってよいのか?」という疑問――新しい環境ではストレスを感じやすいので、職場の環境を変えるのはよくないとも言われますが、メンタルダウンの原因だったかもしれない“休職前の部署”では症状が再発する可能性があります。教科書どおりではない、その方の状態に合った“個別対応”が重要でしょう。

 復職希望者の多くは自らの意思によって復職したがっています。治っていないのに「復職したい!」とおっしゃる方もいて、経済面での不安や周りの目を気にして、就労を急いでしまう――しかし、結果的に症状が悪化して退職に至ってしまうパターンが多いのです。私自身もそうでした。「これから頑張ります!」という前のめりの気持ちに、専門家をはじめとした周りの人たちがブレーキをかけてあげることも必要。職場復帰した課長職などの中間管理職に対しては、「○○のときは絶対に無理しないでください」「土日の休みに月曜を加えて3連休にしたらどうですか?」といったふうに、上司である部長の細やかなフォローが望まれます。

 中間管理職に限らず、従業員全体のメンタルダウンを防ぐために、前述した4つのケアのほかに、企業の経営層や人事部ができることはあるのだろうか?

佐々木 働く人のメンタルダウンを防ぐ“根本的解決方法”としては、人事部主導による教育研修や公正な人事評価の実施があります。私の実感では、教育研修や人事評価がきちんとなされている会社は、メンタルダウンの当事者が少ないです。それから、中間管理職である課長クラスのメンタルダウンを減らすために、部長クラスの研修を行うことも重要です。社内から「部長クラスが研修を受けるべき」という声が上がるものの、それが実現できないことが多く、なかには、「人事担当者よりも部長の役職が上なので研修を企画しづらい」といった理由もあるようです。

 また、新入社員や入社3年目くらいまでの若手には、「自己認識」をアップデートできる研修を行うことを私は提案しています。「得意ではないと思っていたジャンルでも、自分の強みを生かせることが分かりました」といった「自己認識」がメンタルダウンを防ぐ一助になるのです。

メンタルダウンした管理職に、企業はどう向き合い、本人はどうすればよいか