お互いを認め合い、尊敬し合う関係になったメンバー

 やがて、昨年(2022年)10月末――さまざまな不安や苦労を乗り越えてきたプロジェクトメンバーの学生たちに、私は再会した。「シン・就活手帳」が完成しての“お披露目会”だ。久しぶりに会った彼・彼女たちは、プロジェクトメンバー同士の深い絆と自分自身への自信を手にしていた。

「今日、この場に来るのがとても楽しみでした。手帳の完成もそうですが、新しくできた仲間に久しぶりに会えるのがうれしくて……」

「対面で他大学の学生と会うのは、このプロジェクトが初めてだったので、最初は本当に手探り状態でした。でも、ここでできた仲間たちが私の財産になりました」

 笑顔でそう話す学生たちの姿に、私も胸が熱くなった。

 コロナ禍の学生たちの寄る辺なさについては、選考オーディションのときからずっと感じていた。きっと、初回の会議では、全員が不安な気持ちでいっぱいだったにちがいない。

 エグゼクティブ・プロデューサーの脇田さんは、昨今の就活生の特徴として、「対面に慣れていない」ことを挙げている。しかし、このプロジェクトを通して、学生たちは「対面で議論すること」の面白さや価値を十分に感じ取ったようだ。

「仲間の一言がアイデアを膨らませ、磨きをかけてくれるという学びを得ました。良いモノは一人では作ることができないということを体験することができました」(C.Hさん)、「相手の意見を肯定することで、違う意見も提案しやすくなり、発言することが怖くなくなりました」(T.Wさん)――「このプロジェクトで得たものは?」という質問に対する、こうした答えがとても印象的だった。

 対面でのディスカッションはまさに“ライブ”であり、そこには大きなパワーが生まれる。時に、そのパワーが相手の意見や考えを押さえつけるかたちになっても、他の誰かがフォローしたり、違う角度からアイデアを出してみたり……同じ空間にいることで、相手の表情や仕草、声のトーンから発言者の思いを感じ取り、繊細なコミュニケーションをとることができた。そして、そんなコミュニケーションを通して、相手の人となりを理解していった。

 プロジェクトを進めるうちに、初対面の学生たちが、お互いを認め合い、尊敬し合える仲間になっていく――そんな様子を、私は「シン・就活手帳」の制作サポートを通じて間近で見ることができたのだった。

 対面での議論を重ねることで築けた信頼関係。4回という、決して多くはない機会のなかで、「モノづくり」に真摯に取り組み、得られた絆。それは、これからの就職活動において大きな財産になるはずだ。「シン・就活手帳」の制作という「ガクチカ」を得た彼・彼女たちが、今年中に聞かせてくれる“吉報”を、私は楽しみにしている。

コロナ禍の就活生が、“アナログ手帳”の制作で得たコミュニケーション