これまでにはなかった“オンライン”でのやりとりもあった
実体験した“モノづくりの現場”を、プロジェクトメンバーの学生たちが振り返る。
「方向性の軸をしっかり定めることが必要だと感じました。ぶれない軸があるとアイデアを出しやすかったり、意見をまとめやすくなったりすると思いました」(C.Hさん)、「会話することが大切だとわかりました。自分の意見を出して満足するのではなく、他人の意見を聞くことで、さらに自分のアイデアを膨らませることが多かったです。自分ひとりでは絶対に考えられない手帳ができました。全員が話し合いに参加できるように目を配ることも必要だと実感しました」(T.Wさん)、「仲間と意見をぶつけ合うことが必要で、その過程でひとつのアイデアを多角的に検討する機会を多く持てました」(K.Hさん)
エグゼクティブ・プロデューサーの脇田さんは、学生たちが、会議中だけではなく、SNSを活用して頻繁にコミュニケーションを取っていたことに大きな価値があったと語る。
「過去2年間の手帳制作もコロナ禍でしたが、幸運なことに、会議はすべて対面で行われ、欠席者も出ませんでした。しかし、今回は、コロナの影響でしかたなく欠席する学生やオンラインでの参加者が出ました。『オンラインでのコミュニケーションにおいては課題が残った』と私自身は感じていますが、会議を欠席するメンバーに、参加学生が事前に意見をヒアリングするなど、対面で集まれない状況でも積極的にコミュニケーションを取って、制作に向き合ってくれました」(脇田さん)
話し合いでは、手帳の中身だけではなく、装丁などの造本についても多くの時間を費やした。
製本は糸かがりにするのか、ソフトカバーにするのか、ビニールやペンホルダーをつけるのか、また、用紙やスピン(しおりひも)などの部材についても、学生自身が一生懸命に考えていく。出版業界の慣れない専門用語を把握するだけでも大変だったと思うが、オンラインでの参加では、実際にサンプルに触れて検討することができないという不便もあった。
アナログ手帳は“開き具合”をチェックしたり、用紙にペンを走らせてみて、書き心地を確かめたりすることが必要だ。「モノづくり」における、“見る・触れる・確かめる”重要性を学生たちは実感したことだろう。手を自ら動かして表紙を考えたり、いくつかの束見本(造本のサンプル)を手にして造本を検討するにつれ、「自分たちにしかつくれない、就活生のための手帳を!」という思いが強まっていったようだ。「既成概念にとらわれず、いまの学生が使いたい手帳にする」というハードルの高い目標ではあったが、メンバー全員が粘り強く「モノづくり」に臨む姿が印象的だった。