強力な電動ドリルを使うとどうしても壁にひびが入ってしまうが、国債利回りに上限を設ける日銀の政策も同様のようだ。ただこれは、各国中銀が2008年以降に試した多くのツールと異なり、政策手段の一つとして残しておく価値があるかもしれない。日銀の黒田東彦総裁は今のところ他の中銀当局者とは距離を置き、超緩和的な金融政策の巻き戻しを拒んでいる。黒田氏は「イールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)」のもと、10年物国債利回りの目標値を0%に維持している。ところが同氏は今週、その許容変動幅を上下0.5ポイントとし、従来の2倍に引き上げると発表した。その後、利回りは新たな上限近くまで上昇した。黒田氏は軌道修正との見方を否定している。従来の上限では10年債に対する売り圧力を招き過ぎたと説明した。しかし多くのトレーダーにとって、これこそが重要なポイントである。どの国でも金利が上昇している中では緩和的な政策を続けられないということを、市場が当局に認めさせたのだ。