孤独と向き合って自分を知った大学生と、これからの社会のありかた

学生をはじめとした若者たち(Z世代)はダイバーシティ&インクルージョンの意識が強くなっていると言われている。一方、先行き不透明な社会への不安感を持つ学生も多い。企業・団体はダイバーシティ&インクルージョンを理解したうえで、そうした若年層をどのように受け入れていくべきなのだろう。神戸大学で教鞭を執る津田英二教授が、学生たちのリアルな声を拾い上げ、社会の在り方を考える“キャンパス・インクルージョン”――その連載第7回をお届けする。(ダイヤモンド社 人材開発編集部)

* 連載第1回 「生きづらさを抱える“やさしい若者”に、企業はどう向き合えばよいか」
* 連載第2回 ある社会人学生の“自由な学び”から、私が気づいたいくつかのこと
* 連載第3回 アントレプレナーの誇りと不安――なぜ、彼女はフリーランスになったのか
* 連載第4回 学校や企業内の「橋渡し」役が、これからのダイバーシティ社会を推進する
* 連載第5回 いまとこれから、大学と企業ができる“インクルージョン”は何か?
* 連載第6回 コロナ禍での韓国スタディツアーで、学生と教員の私が気づいたこと

2022年度、教室にようやく戻ってきた学生たち

 2020年度、大学のキャンパスから学生が消えていた。教職員も在宅勤務が推奨された。私は研究室に毎日通い、閑散とした職場で一日中パソコンの前に座っていた。ほとんど誰もいない職場だったので、仕事の合間に大声で歌を歌ったり、楽器を演奏したりするのが、唯一のストレス発散方法だった。

 2021年度、恐る恐る再開された“対面授業”も、1週間でオンライン生活に逆戻りした。秋からはいわゆる“ハイブリッド授業”が定着し、キャンパスに賑わいが戻りかけたが、冬にはまた全面“オンライン授業”になった。

 2022年度、ようやくオンライン授業から解放され、学生たちも教室に戻ってきた。私たち教員も、マスク越しの学生の素顔が見えてきた。この原稿を書いている現在は12月末だが、キャンパス全体は、ほぼ2019年度以前と同様の賑わいをみせている。

 最近、「3年ぶり」という言葉をよく使っているような気がする。ついこの前は、3年ぶりに学生たちの親睦レクリエーションの企画を行った。土曜日に学生と教員50名ほどが集まって、午前中は卒業論文や修士論文の検討会を行い、午後から体育館で身体を動かした。レクリエーションのプログラムの企画や実施は3年生に任せた。気軽に研究の話ができるコミュニティを復活させることが目的で、仲間をつくろうとする学生たちのモチベーションも高かった。体育館は笑いに溢れ、「大学に入ってこんな楽しかった時間は初めて」という声さえ聞かれた。

 学生の側からみると、学年によってコロナ禍の体験が異なったのではないかと思う。現在の3年生は、最も新型コロナに振り回された学年だろう。入学式は中止、新しい友だちはモニター越しにつくるしかない学生もたくさんいた。部活やサークルなどの課外活動も制限され、入学前に思い描いた大学生活とは大きくかけ離れた大学生活だったに違いない。通常のキャンパスをようやく実感できるようになってきた時期には、もう大学生活も半分が過ぎ、就職活動と卒業論文に追われている。ただ、この学年の体験は、大学の規模などによって異なっているようだ。2020年度も対面授業やサークル活動を活発にやっていたという他大学の学生の話も聞く。