認知症のような症状が出てきて調べたら、脳腫瘍があったり、甲状腺機能低下症であったりすることもあります。まれにですが、「正常圧水頭症」という病気のときもあります。正常圧水頭症は、脳内でつくられる脳脊髄液が脳室にたまることで、周囲の脳が圧迫されることで認知症と似たような症状が出てきます。これは脳脊髄液の流れを脳室以外に流す手術をすれば治ります。これはCTスキャンをするとすぐにわかります。

 こういうことがあるため、認知症のような症状があったときは専門医に診てもらってほしいのです。

 また、うつ病でも認知症に似た症状が出ます。この場合は、薬物治療が有効ですし、本人の気分もよくなります。

 ですから、ひとくくりに認知症とまとめてしまわないで専門医の受診が重要なのです。

まだ認知症の症状のないあなたが
考えるべきこと

 認知症の早期発見や原因疾患を見極めることは可能ですが早期治療はできません。

 がんのように、疾患原因を取り除くわけにはいかないからです。

 認知症の薬は進行を遅らせるといわれたりしますが、あまり効かないという調査結果もあります。また、怒りっぽくなったり情緒不安定になったりするときに安定剤が処方されますが、対症療法ですし、かえって脳の機能を落とします。薬を飲んでおとなしくなるというのは、脳の機能をボーッとさせているからです。そうすると、動くのが億劫になり、脳も筋肉も退化するかもしれません。

 はっきり言って、医者に認知症は治せません。

 しかし、認知症を診てくれる医者は必要です。

 なぜなら、介護保険の意見書は医者が書くからです。介護保険を申請するとき、また、更新や区分変更のときに医者の意見書が必要なのです。その意見書に医者は病名として認知症と書きます(認知症専門医でないと原因疾患を書けないからです)。

 普段から家族の話を聞き、本人をよく診ている医者なら、意見書に病名のほかに詳しい状態や本人の困難さも書いてくれるでしょう。