親や自分が要介護3以上なら最安は特養(特別養護老人ホーム)、自分で身の回りのことはできてお金があるなら、快適なのは高級老人ホームだ。特集『最適な介護施設選び&老人ホームランキング』(全21回)の#5では、代表的な高齢者向け施設・住宅の費用やサービスの内容を紹介する。(ダイヤモンド編集部)
特養なら身元保証人が不要
費用は民間より安いが入居待ちが多かった
親の在宅介護に限界を感じ始めた、あるいは、子供にこれ以上面倒をかけたくない。こうしたとき、老人ホームへの入居を考える人は多いだろう。
ただ、一口に「老人ホーム」と言ってもさまざまな種類と特徴がある。いざというときのために、その違いをしっかりと整理しておきたい。
入居型の介護・高齢者施設は、ざっくりと「公共型」と「民間型」に分けられる。
公共型の代表格が、「特別養護老人ホーム(特養)」だ。高齢者向けの施設では最も歴史があり、公共性の高い役割を担うため、主に国民のお金を原資として運営している(税金50%、介護保険料40%、利用料10%)。
通常の運営費以外にも、建築費や修繕費などに補助金が出ている。だから、その人の経済状態にかかわらず、誰でも利用する権利がある。民間のホームで要求される身元保証人も基本的に不要だ。
税金が投入されているので、勝手に料金を変えることができない、施設の都合で退去させることができない、などの縛りもある。
ただし、医療的なケア(常時経管栄養、胃ろう、インスリン、たんの吸引など)が必要な人は入居できない場合がある。また、病院への入院が3カ月を超えると原則、退去となる。
介護体制がしっかりとしている一方で、月額の費用は民間の施設に比べて安い。ただ、地域によっては待機者が大勢いるなど、入居は狭き門であった。
特養の実際の待機者は意外と少ない
定員の3割近くが毎年退去する
しかし最近になって、状況は大きく変わった。2015年に入居条件が要介護1以上から3以上に引き上げられたことにより、毎年、定員の3割近くが退去する時代になり、以前に比べるとかなり入りやすくなっている。
特養の事情に詳しいUビジョン研究所の本間郁子理事長が解説する。「待機者が数百人レベルの施設でも、実際は数十人というケースは少なくありません。申し込みだけして、他の施設に入居していたり、お亡くなりになったりしていても、申し込みが取り消されていないことがたくさんあるからです」
要介護度が高い親の施設を探す際、資金的な余裕がない場合は、真っ先に検討したい施設だ。
公共型には、そのほかに「介護老人保健施設(老健)」「介護医療院」などがある。
老健は、病院から退院後に在宅復帰を目指し、リハビリなどを行う施設。病院と家の中間的な位置付けであり、原則3~6カ月程度しかいられない。ただ、実態としては期限が来ると別の施設に住み替えたり一時的に入院したりするなどして、老健に長期間入所している人もいる。
介護医療院は、介護療養型医療施設の後継施設として、18年度に創設された。長期的な医療と介護の両方を必要とする人を対象とし、医療ケアに手厚い施設という位置付けだ。
次ページでは、入居金が1億円を超えることも珍しくない、富裕層に人気の高級老人ホームの内実に迫る。