幸いにも深夜から朝にかけての商店街は閑散としており、コインパーキングからの監視が可能でした。天国でした。交互に仮眠をとりながらの車張りは朝まで続きましたが、結局、雪乃さんは姿を現しませんでした。

 朝になり、賑わい始めた商店街の雑踏や店の前に出された商品棚などで視界が遮られたため、またもやファストフード店からののぞき張りに切り替えました。そしてその日もまた閉店時間になり、車張りに切り替えて朝になり、ファストフード店のいつもの席につきという行動を、さらにもう一サイクル繰り返しました。お風呂にも入れず着替えもできず、3食全てファストフード店。全メニューを制覇して、お店の人や常連客からの恐怖を超えた犯罪者でも見るかのような懐疑のまなざしにさらされ続け、私とパートナーの体力と精神力はギリギリの状態でした。

 その間ずっと、雪乃さんが出てきたところを見落としたのでは?という不安にさいなまれていました。疲労とポスターの隙間3センチからの監視という劣悪な環境は、悪い想像ばかりをかき立てるのです。

張り込み開始から4日目の朝
パートナーの叫び声で起きると…

 室岡さんとは定期的に連絡をとっており、雪乃さんが帰宅していないことと、海斗くんは冷凍物ではありますが、食事が取れていて無事なことは知っていました。室岡さんは、雪乃さんが大事な我が子を置いて外泊を続ける行為をエスカレートさせていることにとても怒っていました。

 帰宅はしていないものの、商店街のマンションにいない可能性もあるのです。もし不貞相手と別の場所にいるとなると、これまでの調査は全くの無駄になってしまいます。いなかったらどうしようと、頭の中で答えの見つからない問いを繰り返しながら、張り込みをもう一サイクル繰り返し、ファストフード店の閉店時間を迎えました。

 調査を始めて4日目の深夜、かすむ目をギリギリ開けて、車の中でなんとか張り込みを続けていました。パートナーと交互に仮眠をとりながら少しでも体力を回復させていましたが、私が仮眠をとっていた早朝5時頃、パートナーの「わー!すいません!!」という叫び声で飛び起きました。

 私が寝ている間にパートナーも寝落ちしてしまい、2時間近く無監視の状態が発生してしまったのです――。雪乃さんが乗ってきた自転車は駐輪場から無くなっていました。