ノーコード/ローコードを適切に
利用するための4つのポイント

 90年代のEUC/4GL/RADの潮流による反省点を踏まえ、現在のソフトウェア開発におけるノーコード/ローコードの適切な利用を考えたときに、私たちは次の4つのことを心に留めておくべきでしょう。

 1つ目は「適材適所=身の丈に合わないことはしない」ということ。実はノーコード/ローコードツールでも、頑張れば複雑な処理はできてしまいます。しかし、本来、そのツールが対象としているスコープ外のものを無理に作らないようにした方がいいのです。「ここまでできた」「あそこまでできる」と挑戦しすぎて“秘伝のタレ”のようになってしまうと、何がどう動いているかわからなくなってしまうからです。

 2つ目は「属人性をなくす」こと。ノーコード/ローコードツールにはこれが得意でないものも多いのですが、複数名での開発や変更履歴管理をサポートするツールを使えば、属人性を減らすことが可能です。ただ、そうした機能はビジュアルプログラミングとはあまり相性がよくないため、備わっていないツールの方が多いのです。属人性を気にせずとも一時的にしか利用せず、メンテナンスの必要がない、いずれ捨ててしまうようなものだけにツールを使う、という割り切りも必要でしょう。

 3つ目はノーコード/ローコードに限らず、マネージド発想のツールやプラットフォーム全般に言えることなのですが、「ベンダーロックインの功罪を理解する」ということ。「ベンダーロックイン」とは、ツールやプラットフォームへの依存度が上がって、別のツール等への移行が難しくなる状態をいいます。

 マネージド発想のツールやプラットフォームには、ベンダーロックインの可能性が多かれ少なかれあります。そこで、そのツールやプラットフォームが信頼に足るものかどうかをきちんと見極めることが重要です。頻繁にサービスがダウンしたり、データが外に流出する可能性があったり、サービスが簡単に終わってしまったりするようでは困ります。安定性やセキュリティ、プライバシー保護の強固さ、サービスの永続性を確認しておきたいところです。

 たとえば、ウェブの記事ページを編集・管理できるコンテンツマネジメントシステム(CMS)も一種のノーコード/ローコードツールですが、新技術への対応が遅いCMSを採用して、スマートフォンがすっかり普及した後にスマホでアクセスしてもPC用の小さな文字の画面しか表示できず、しかも自分たちでは修正できなかった、といったことは過去にもたくさんあった話です。ツールが新しい技術やデバイスにすばやく、きちんと対応してくれそうかどうかを見極めることは重要です。