こうした進化の流れはプログラミング言語・ツールのみにとどまりません。コンピュータを使うためのシステムも、以前は自前で全てのハードウェアやネットワークを用意する必要がありました。コンピュータの熱暴走を防ぐために社内に「電算室」「コンピュータルーム」と呼ばれる空調の効いた部屋を整備し、メインフレームと呼ぶ大きなマシンを調達してきてネットワークを引くということを、全て自社で行っていたのです。

 しばらくすると、データセンターというかたちで、社外にハードウェアを収容するサービスが登場し、電源やネットワークなどを自前で用意する必要がなくなりました。レンタルサーバーやVPS(仮想専用サーバー)などが登場すると、ハードウェアやOS、ミドルウェアも準備せず、ウェブ上で設定するだけで利用できるようになります。それがより進化したものが、アマゾン、グーグル、マイクロソフトなどが提供する、クラウド上の仮想サーバーサービスです。アクセスが増えたときには自動的にリソースを追加することも可能となり、人が張り付いて管理する必要もなくなっていきます。現在は、SaaS・PaaS・BaaSといった、より上位の仕組みもクラウドサービスとして提供されるようになりました。

ノーコード/ローコードの源流は
1990年代にさかのぼる

 ITサービスの「クラウド」への進化は、大きくは「マネージド」と呼ばれる発想から成っています。マネージドは、サービスを提供する事業者がシステムをしっかり管理するので、顧客は必要な部分だけを自分で用意すればよい、という考え方です。

失敗しないノーコード・ローコード活用、属人化やロックインの功罪オンプレミスでは全ての仕組みを利用企業が用意する必要があったが、徐々に事業者によって用意される(マネージド)部分が増えていく
拡大画像表示

  このクラウドへの流れは、基本的にはノーコード/ローコードへの流れと同じです。

 ノーコード/ローコードの生い立ちは1960年代・70年代にさかのぼりますが、その考え方が広く認知されるようになったのは90年代のことです。90年代はWindowsやワークステーションが登場し、企業の多くの人の机でパソコンが1台ずつ使われるようになっていった時代です。それまでコンピュータルームで専門家が使っていたコンピュータを、一般社員もどんどん直接触るようになりました。そして、用意されたアプリケーションを単に利用するだけでなく、コンピュータを使って業務の自動化や効率化を図る人が出てきます。

 その頃、言われていたのが「エンド・ユーザー・コンピューティング(EUC)」「第4世代言語(4GL)」「ラピッド・アプリケーション・デベロップメント(RAD)」という3つのキーワードです。