銀行・信金・信組 最後の審判 #14Photo by Takeshi Shigeishi

2021年に最高経営責任者(CEO)だった吉村猛氏を解任した山口フィナンシャルグループ(FG)。新体制下の山口FGが今、再編を仕掛けるとの観測が浮上している。その銀行とはどこか。特集『銀行・信金・信組 最後の審判』(全16回)の#14は、「クーデター」を成就した山口FGの次の一手を読み解く。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

“クーデター”成就後の次の一手に
山口FGが狙う再編相手の地銀とは?

 地方銀行業界を騒然とさせた“クーデター事件”が、山口フィナンシャルグループ(FG)で起きたのは2021年6月のことだ。当時会長兼グループCEO(最高経営責任者)だった吉村猛氏が、株主総会直後の取締役会で代表権を剥奪され、後に取締役解任を突き付けられた(詳細は連載『銀行クーデター』参照)。

 その吉村氏の後任に就いたのが、現社長CEOの椋梨敬介氏だ。新体制下の昨年5月に策定した中期経営計画には、「配当性向40%程度」、「24年度のROE(自己資本利益率)5%程度」といった、明らかに投資家を意識した目標数値が並ぶ。

「企業価値を上げようという意思は感じる」とファンド関係者が語るように、これまでのところ、椋梨体制の市場での評価は上々のようだ。

 ただ、足元で進める店舗の統廃合や人事制度改革だけでは、地方経済の衰退に抗う成長戦略とはなり得ない。「地域の豊かな未来を共創する」という新たなパーパス(存在意義)も、ありきたりで具体性がない。

 では、自らが示した企業価値向上の“約束”を、どのように果たすつもりなのか――。

 今、市場関係者の間では「山口FGが狙うのは再編による規模拡大だ」(前出の関係者)との観測が浮上する。次ページで、その相手ともくされる銀行名を明かし、再編の実現可能性について検証する。