銀行・信金・信組 最後の審判 #13Photo by Masato Kato

「金融処分庁」から「金融育成庁」への転換を掲げてきた金融庁。しかし地方銀行では、仕組み債の販売を巡り顧客からのクレームが増加。海外金利の上昇で外国債券の逆ざやも発生するなど、さまざまな問題が明るみに出ている。特集『銀行・信金・信組 最後の審判』(全16回)の#13では、銀行関係者から「泣く子も黙る」と恐れられた検査局(2018年に廃止)から業務を移管され、金融機関のモニタリングを行う総合政策局モニタリング部門の屋敷利紀審議官に、各種モニタリングのポイントや今後の強化点について聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 新井美江子)

仕組み債の販売状況は「心外」
顧客本位の業務運営がなぜできない

――仕組み債の販売リスクは地方銀行全行、外国債券の運用リスクについては大手地銀20行を対象にモニタリングを行っているとのこと。金融庁は昨年から、モニタリングを強化しているように見えます。

 地域銀行に対する仕組み債の販売リスクや外債を含む有価証券の運用リスクのモニタリングは、銀行法等に基づく立ち入り検査ではありません。一般的な監督上の対応として行っているものが多く、特別なことをしているわけではないのです。

――モニタリングを強化しているかどうかはともかく、特に仕組み債の販売においては、金融庁の「問題提起」の効果は絶大でした。今回、ダイヤモンド編集部では仕組み債の販売状況について地銀に対しアンケート調査を行ったのですが、ほぼ全ての地銀が仕組み債の販売体制を見直しています。

 仕組み債の販売については心外でした。なぜ顧客本位の業務運営ができていないのか。びっくりしましたね。昨年7月に金融サービス利用者相談室も私の所管になったのですが、そこに寄せられる苦情を見ても、わが目を疑うような内容のものがありました。

――なぜ顧客本位の業務運営ができていないのだと思いますか。

 これは謎です。銀行は自分たちで「顧客本位の業務運営を行う」と宣言し、その原則を踏まえた取り組み方針まで出しているというのに、なぜできていないのか。

 利益を追い求めるのはいいのです。それ自体は全然悪くないのですが、掲げたはずの取り組み方針が現場で全く踏襲されていないという事例が非常に多くある。

 一つの仮説を挙げるとすれば、顧客本位の業務運営の実際の在り方について、金融庁がうるさく問わなかったからですよね。

――そうはいっても金融庁は近年、「金融処分庁」から「金融育成庁」への転換を打ち出してきました。締め付けを行うと「話が違う」と言われませんか。

 悪いことを悪いと言うのがわれわれの仕事じゃないですか。

悪いことは悪いと言うべきだ――。屋敷利紀審議官は、「金融処分庁」からの脱却と、銀行を甘やかすのとは話が別だと言いたいのだろう。では金融庁は、地銀業界で問題となっている仕組み債と外債について、何を重視してモニタリングを行っているのか。次ページではそのポイントについて聞いた。