誰もがアッと驚く改革を思い切って実践するほかない。トヨタはクラウンの改革において念には念を入れて世間を驚かせてみせた。なんと、クラウンの名で4種のスタイルを用意したのだ。クロスオーバー/スポーツ/セダン/エステート、今後グローバルで販売台数を稼げるすべてのタイプを網羅してみせた。この実行力こそ世界を代表するメーカーならではの底力というべきだろう。

 そう、クラウンはデザインからメカニズム、レイアウト、マーケット戦略まで、従来の歴代モデルとはまったく関連性のないモデルとして生まれ変わった。極端なことをいうと、もはや共通しているのはクラウンという名前だけ。そこに“そもそも論”の生じる余地もあるが、そんなことはいっていられなかった。名前を残すだけでなく、もう一度フラッグシップモデルとして、今度はグローバルの世の中に、その名をとどろかせるため、必要だと思われる決断をすべてやってのけた。旧来の価値観を超えて新たな価値を創出するためのまさにチャレンジだったといっていい。

フェラーリより目立つ造形!
新開発ハイブリッドは圧倒的にパワフル

 第1弾として登場したクロスオーバーは、クーペフォルムのグランドセダン・スタイルだ。クラウンはリアゲートこそ持たないが、欧州のメジャーブランドでも最近よく見受けられるカテゴリーに属する。サルーンイメージの強いクラウンにはまったく縁のなかったカタチといえる。だからこそ多くの人に衝撃を与え、その中から熱心な支持者が現れている。現状維持のサルーンデザインのままであったなら、いかに突飛な顔立ちをしていたとしても、ここまで多くの衝撃と、熱烈な支持者を得ることは叶わなかったに違いない。

 実際、新型クラウンを街中でドライブしていると、スーパーカー並みに人々の視線を感じる。フェラーリに慣れっこな東京都内でも、こちらを見ている。そして多くの視線は笑顔と共にある。写真で見るよりも数段カッコいい。2トーンや“らしくない”色使いなど、大胆なカラーリングも注目を浴びる要因だ。少なくとも赤いフェラーリより都心では目立っていた。

 外観でここまでぶっ飛んだのだ。インテリアも従来路線でいいはずがない。ホイールベースこそ短くなったものの、室内の開放感は旧型をはっきりと上回る。これなら海外市場でも十分通用しそう。デザイン的にもモダンでかつクリーン。新しい価値観の演出がなされている。もっとも、個人的にはもう少しマテリアル質感を上げてもよかったように思う。