人前で叱ることが引き起こすデメリット
コミュニティーの質の低下も懸念
では反対に、人前で叱ることによるデメリットはどうか。
(1)叱られる人に恥をかかせる。叱られている人はそれによって動揺するので、叱られている・注意されている内容自体が頭に入ってきにくくなり、叱ることによる改善の効果が薄れる。
(2)繰り返されると、叱られた人は叱る人に対して反感を募らせる。
(3)叱られた人は再度人前で叱られることを恐れて、積極性を失うことがある。
本来、“叱る”という行為は改善を願ってされるはずのものなのに、それが「人前」になっただけでこれらのデメリットを引き起こす可能性があるのである。上記は関連書籍やサイトなどから学んだ知識だが、筆者個人の論として、四つ目のデメリットの可能性も指摘したい。
(4)繰り返されると、そのコミュニティーの質が低下するおそれがある。
「人前で叱る」が行われている時、それを周りで聞いている人の心中はどんなものか。
「叱られているのが自分でないのでよかった」「矛先が自分に向きませんように」「理不尽な叱り方をしていて、胸くそが悪い」などで、「自分も気をつけよう」といったポジティブな自省が占める割合は少ないだろう。さらに叱られている人に対して、「そのコミュニティー全体で見下していい」という誤った認識を持つ人が一定数出てきてしまうと、いじめなどを誘発する。こうして、不必要な「人前で叱る」が常態化しているコミュニティーでは健全さが失われ、嫌な空気が立ち込める殺伐とした密室が出来上がってしまうのである。
そもそも不用意に相手の尊厳を傷つけるようなことを、良識ある人はしたくないはずである。人前で叱ることはリスクとデメリットが生じるかもしれないのだから、「なるべく避けた方がいいもの」くらいに認定してもバチはあたらなさそうである。