フィリピンの保育士さんもチリのお父さんも
「人前で叱ることはしない」
ある時、海外プレーヤーがギルドで定めたルールに違反したので、日本人プレーヤーがそれを注意したことがあった。その注意の仕方について、フィリピンの女性保育士さんと、チリの子だくさんおじさんが「私は・僕は人前で叱ることはしない」と話していた。
その理由は2人ともだいたい同じで、「叱られる人に恥をかかせることになるから」とのことである。
彼らの話は、海外の人たちの傾向を鑑みるに実に腑(ふ)に落ちるものであった。というのも、海外のプレーヤーは人前で叱られたり注意されたりするのを極端に嫌がるからだ。
叱られるのを回避するために、うそをついたり言い訳をしたりすることもある。同ゲームの日本人先輩プレーヤーも含めて、日本人かいわいは、おおむね異口同音にこの感想を持っており、筆者は「海外の人は人前で叱られるのが苦手なのだ」、つまり「耐性不足。人前で叱られる経験を積んでこなかった」と結論づけていた。フィリピンとチリの2人の話も、この持論を補強するものに過ぎなかったのである。
しかし、ある日本人メンバーの言葉で気持ちに変化が生まれた。そのメンバーは「たしかに、『上司が部下を人前でののしる』というシーンは日本のパワハラなイメージがある」という内容の発言をしたのである。
これは筆者にとっても一度持論を振り返り、精査する機会となった。自分の中に当然としてあった価値観は、他の文化から見た場合にもしかしたらあまり正しい(あるいは好ましい)ものではないのかもしれない……と考えたからである。
そして、ものの本を読むなどして勉強してみたが、結論から言って、最近(およそ3~4年前から)の国内の傾向として「“人前で叱る”はリーダー・上司としては本当に必要がない限り避けるべきだ」とされていることがわかった。