人前で叱る利点はあるのか
本当に「人前で」叱るべきケースか否か 

 人前で叱ることの利点には、どのようなものが考えられるか。
 
(1)組織として順守したい考えを一同に示すことができる。
(例)「遅刻しないでください」と誰かを叱ることで、みんなに「遅刻はよくない」という考えを伝えることができる。

(2)リーダー・上司の姿勢の一貫性を示すために怒るべきシーンがある。
(例)「いつもは遅刻のことを注意するのに、今日は10分遅刻した社員に何も言わなかった」←こうしたことの積み重ねが部下からの信頼を損なう結果につながる。

(3)周りの人が注意しにくいことを、リーダー・上司が代表する形で注意する。
(例)いつも遅刻する部下に対してリーダーが「遅刻しないように気をつけて」と伝える。←周りで見守る人たちの胸中に、遅刻する部下に対して悶々として着々とたまっていく鬱憤を、リーダーが人前で注意することで、いったん晴らすことができる。
 
 このようにメリットを挙げることはたしかにできるのだが、別に人前で叱らずとも、例えば「注意するために1対1で話せる別室に呼ぶ」といったやり方も可能である。3番のケースなら、その部下が遅刻した直後に「話があるから別室に来てください」とみんなの前で告げて叱ることを示して、たまった鬱憤を晴らすことも可能である。
 
 つまり、叱る際には、「人前で叱ることに必ずしも固執しなくていいケース」があるので、その可能性が常に考慮され、「人前」の必要がないと判断できたら「1対1」にシフトするのが望ましそうである。