日銀総裁「初の学者」は岸田首相の“プランC”、アベノミクス離れの成算Photo:show999/gettyimages、Jun Takai

「サプライズ人事」の思惑
政治色薄め異次元緩和手じまいに

 4月に任期が切れる日本銀行の黒田東彦総裁の後任に経済学者で元日銀審議委員の植田和男氏が就任する見通しになった。

 2月14日の衆参両院の議院運営理事会に、二人の副総裁候補とともに提示され、国会での同意が得られれば日銀の新体制が発足する。

 行き過ぎた円安や国債市場の機能不全など黒田総裁の下10年近く続けられてきた異次元緩和の行き詰まりと弊害が目立ってきた中で、新総裁の下、当面は現状の緩和政策を維持するとみられるが、今後5年の任期中には、金融政策の正常化が最重要課題となる。

「2%物価目標」を掲げた政府・日銀の共同声明の見直しをはじめ、国債市場などの混乱を回避しながらマイナス金利政策やイールドカーブコントロール(YCC)の撤廃など異形の政策の手じまいを模索することになる。

 異次元緩和はアベノミクスの象徴だっただけに、新総裁人事は、安倍元首相死去後、岸田文雄首相が安倍派に配慮した政策運営からどこまで独自色を出せるのか、という意味でも注目された。

 当初、考えていた候補の就任固辞もあり、理論に精通する学者総裁の起用で、政治色を薄め経済や市場の状況を重視する下でアベノミクス離れを進める思惑のようだ。