株価Photo:PIXTA

考え得る「最良」の総裁・副総裁3人
日銀人事を契機に日本株が再び脚光も?

 今春交代する日本銀行の新総裁に、政府が元日銀審議委員の植田和男氏の起用を固めたと報じられた。脇を固める副総裁には内田真一・日銀理事、氷見野良三・前金融庁長官の名が挙がっている。この通りとなれば、考え得る中で「最良」と言えるのではないか。

 植田氏は日銀で実務経験があるうえ、何より経済学者であるだけに、これまでより一段とデータを重視するだろう。定量的な分析に基づく意思決定は理解や納得を得られやすく、従来以上に客観的で透明性の高い金融政策運営が期待できる。海外へのネットワークも豊富なようだ。

 また内田氏は日銀内部をまとめる役割を、氷見野氏はジャネット・イエレン氏(米財務長官・前FRB〈米連邦準備理事会〉議長)やクリスティーヌ・ラガルド氏(ECB〈欧州中央銀行〉総裁)といった海外の主要人物と直接的に対話できるとされる人脈を生かして外交的な側面を担うなど、国内外で手分けして植田総裁を支える構図が期待できる。

 市場では、新総裁が「ハト派」「タカ派」のどちらであるのか気を揉む声も聞かれるが、植田氏は言ってみれば“中立”ではないか。

 植田氏の名が報道された後、記者団への取材に「金融緩和の継続が必要」と語ったと伝わった。実際、先述の通り学者でデータを重視するだけに、金融緩和が必要と見ればそうするし、日本経済が根元から強くなったと捉えればタカ派的になるなど、時々に応じ柔軟に考えるのではないか。

 政府からの新総裁打診を固辞したと伝わる雨宮正佳副総裁は、当初から最有力候補と目されていた。だが、同氏の場合は黒田東彦総裁の下で10年間携わってきただけに、大きな政策変更は難しかっただろう。植田氏ならば色がついておらず、もう少し自由度が高いはずだ。

 最近の日本株は海外投資家からほとんど注目されていなかったが、今回の日銀人事を契機に、再び日の目を見る可能性も出てきた。

 次ページ以降では、日銀が金融政策正常化に向かった際の日経平均株価への影響を試算するとともに、短期と中長期で株価の行方を展望し、株式市場からの目線で、日銀新執行部への期待と課題を紐解く。実は、長い目で見れば金融政策正常化は株価にプラスとなる可能性も十分にあるのだ。